「CEOといっても、私の場合はチーフ・エンタテインメント・オフィサーですから。とにかく人を笑わせたい、と…」。関西人のノリで快活に語る葉田社長。大阪は御堂筋にある本社にお邪魔して、ご自身の生い立ちから、エレコムの目指す新製品、新市場、そしてM&A戦略まで、いろいろとお話をうかがった。【取材:2008年11月14日、エレコム本社にて】

「当社が扱うPCアクセサリやPCサプライは、『ファーストインプレッション・ファーストタッチ』、
つまり第一印象が購買につながる重要な要素だった」と語る葉田さん
 
 「千人回峰」は、比叡山の峰々を千日かけて歩き回り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借しました。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れることで悟りを開きたいと願い、この連載を始めました。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
株式会社BCN 社長 奥田喜久男
 
<1000分の第32回>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。
 

日本のよさをもっと誇るべきだ

 奥田 葉田社長は、いつお会いしてもお話しが上手で感心しているんです。

 葉田 何をおっしゃいますやら。私はようやく最近になって、人前で話すことができるようになったようなものです(笑)。

 先日(08年11月)、読売新聞から「関西フォーラム」のパネリストを依頼されまして、「どうして生粋の阪神ファンのオレが巨人の応援をしなければならないんだ!」と半ば本気で断ろうしたんです。ところが話を聞いてみると、そのフォーラムの過去のパネリストは、松下幸之助、日向方齊、中内功といった錚々たる方々。思わず、「私ごときでよかったら」と、腰砕けになって出席を快諾してしまいました。

 奥田 手のひらを返すように態度が変わって…(笑)。それで、そのフォーラムはどんなテーマだったのですか。

 葉田 「関西力で世界に挑む」というテーマです。関西の地域特性をどのように世界に展開していくかという話で、関西のものづくりや京阪神の文化について語り合いました。

 奥田 葉田さんは生粋の関西人に見えますが、生まれはどちらでしたか。

 葉田 生まれたのは三重県の熊野市で、小学校5年生までそこで育ちました。その後、兵庫県の芦屋に移り住み、中学から大学までは甲南に通いました。

 熊野の田舎にいた頃は毎回100点の優等生でしたが、都会の小学校では全然勉強についていけない。このときはさすがに猛勉強しました。だから、あまり昔のことは振り返りたくない。それよりも、今の話をしたほうが楽しいですね。

 今は世界中を飛び回ってアクティブに見えますが、それは後天的に身につけたものです。もっとも、会社では、「おれはチーフ・エグゼクティブ・オフィサーのCEOではなくて『チーフ・エンタテインメント・オフィサー』だ」なんて言っていますがね。

 奥田 なるほど、過去は振り返らない、と。では、今の話をうかがいましょう。

 葉田 このあいだ、当社はアメリカで開かれた「ボストン・キャリア・フォーラム」というバイリンガルの学生向けの就職フェアに参加しまして、そこのセミナールームで私は学生たちに持論を語りました。「英会話がちょっとできるからといって、仕事ができるなどと勘違いするな。英語がしゃべれるだけで尊敬されると思うな」って。実際は、私よりはるかに流暢に英語をしゃべる人たちばかりなんですけどね(笑)。ただ、そこに来た留学生の中には、なかなか骨のある子がいましたね。

 私は海外に出かけると、どうしても日本人のアイデンティティや日本企業の経営手法について考えることが多いのですが、それと比較してアメリカの経営で間違いだと思うのは、四半期決算、株主資本主義、M&Aにどっぷりはまりこんでいるという点です。『ハーバードビジネスレビュー』に書かれていることはすばらしいのですが、現実を見ると「これがアメリカの資本主義か」と思ってしまいます。

 戦争に負けて以来、日本人の魂とか道徳とか倫理といったものが否定されがちです。また、日本人自身に自虐的な傾向があるように感じられますが、日本という国はそのよさをもっと大切にすべきだと思います。

 奥田 日本人はもっと胸を張っていい、ということですね。

 葉田 その通りです。現に東南アジアではどこに行っても日本製品が好まれますし、このあいだフィリピンに行ったら、エレコム製品が通常の3倍の価格で売られていました。

 現地の人に「どうしてこんな高いものを買うのか」と問うと、「メイド・イン・ジャパンだからだ」といわれました。「メイド・イン・ジャパン」は、日本を支えるブランドなんですね。それは、韓国や中国の市場でも例外ではありません。アニメなどの影響もあって、日本製品は「ジャパン・クール」といわれ、好かれているんです。

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