尖閣諸島問題で日中関係の軋みが表面化するなか、『チャイナクライシスへの警鐘 2012年 中国経済は減速する』を書き下し、情報とデータに基づいた徹底した分析で中国の未来を予想し警鐘を鳴らす富士通総研の柯 隆・主席研究員にインタビューした。氏自らのエコノミストとしての出発点や中国と日本に対する率直な提言を聞かせていただいた。【取材:2010年11月10日、富士通総研本社にて】

柯 隆さんは「ファイトできる日本人、戦っていける日本人が必要」と檄を飛ばす
 
 「千人回峰」は、比叡山の峰々を千日かけて歩き回り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借しました。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れることで悟りを開きたいと願い、この連載を始めました。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
株式会社BCN 社長 奥田喜久男
 
<1000分の第49回>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。
 

真実をデータで示す

 奥田 『チャイナクライシスへの警鐘』を読みました。2010年9月の刊行ですから、尖閣諸島問題の渦中での出版ということもあって、かなり注目を集めたでしょうね。

 柯 当初は夏に出版する予定だったのですが、この時期にずれこみまして…。こういうタイトルの本ですから、日中関係が話題にのぼることが多くなって、売れ行きもいいようです。怪我の功名ってところでしょうか(笑い)。

 奥田 柯さんがこの本に書かれていることの、メインとなるメッセージを、まず聞かせてください。

 柯 そうですね。要するに、中国経済の拡大の規模・スピードが予想以上で、当初、アメリカやヨーロッパ、日本の研究者も予測できなかった。中国人もまさか自分の国の経済がこんなに猛スピードで発展するとは思ってもみなかったと思います。そういう急激な規模の拡大がさまざまな構造的な問題を見えにくくしているということです。だから、成長していくトレンドをきちんと捉えていくとともに、同時にリスクもしっかりとマネジメントしていかなければならないというのが、私の考えです。

 奥田 タイトルはかなり刺激的ですね。

 柯 「~への警鐘」というのは、不安を煽ったり、煽動したりするような言葉ではなく建設的な言葉ですし、悪意があって書いているのではないのは中国でも分かってくれていると思います。

 奥田 中国には、いろいろと制約があるように思うのですが…。

 柯 日本に来ている中国人にもさまざまな考え方をする人がいると思いますが、自分はエコノミストとしてなるべく客観的なデータを示して、中立の立場から発言していくことを心がけています。

 奥田 そのあたりは、私どもジャーナリストと共通する理念ですね。

 柯 私は平均して月に2回くらい中国に行って、研究者と意見交換をしたり、実際に工場や農村へ行って、ケーススタディをしています。それに私は日本の大学院で勉強しましたから、理論はある程度わかっています。ですから、理論とケースと客観的なデータの三点セットでいつも問題の本質を見極めて提言しています。だから私の本を読んでいただいている方も、その三点セットでわかってくれると思います。

 奥田 確かにわかりやすく書かれていますね。

 柯 その中に、私の信念、物の見方なども書き込んであります。

 奥田 それでは、柯さんがどのようにして、独自の信念や物の見方を形成されてきたのか、そのあたりをお伺いできればと思います。

 柯 何でもフランクに聞いてください。

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