取材当日、会議室に入った途端なんとも華やかな雰囲気に包まれた。往々にして会議室は殺風景なものだが、この日はテーブル一面に並べられた歴代の社内報と担当する女性4人のオーラが彩りを添えてくれた。行動は思いを伴う。取材時間に合わせて1冊1冊をテーブルにどう並べるか話し合う声が聞こえてくる。創刊32年、歴史を感じるそれぞれの表紙から「大切にしてもらっています」と社内報の声も聞こえた気がした。(本紙主幹・奥田喜久男)

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写真左から、村上典子さん、宮崎紀子さん、荒田予理子部長、石井奈緒子さん

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心に響く人生の匠たち

 「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
 
奥田喜久男(週刊BCN 創刊編集長)
 
<1000分の第193回(上)>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。

楽しく読んでもらうためには
自分たちが楽しくつくること

奥田 こんなにたくさんの女性にお話をうかがうのは、『千人回峰』では初めてです(笑)。

全員 よろしくお願いいたします。

奥田 まず、皆さんは広報の前はどこかに所属されていたんでしょうか。

荒田 それぞれ違う部署から異動してここにきていますね。

奥田 お一人ずつ、以前の部署を教えていただけますか。

宮崎 経営企画室や公共ビジネスなどの営業推進を経て広報部にまいりました。

石井 私はヘルスケア事業部でした。SE配属で医療関係のシステムを導入する仕事に関わっておりました。

村上 私もSEでした。開発を担当しておりまして、お客様のシステムを受託開発したり、販売管理のプログラムをつくったりしていました。

荒田 私は人材開発部でした。入社当時は社員教育を、その後は採用を担当していました。

村上 荒田さんはその時代が長いので、今の中核の社員たちは荒田さんに頭が上がらないんです。

奥田 それはアドバンテージが高い(笑)。みなさんは今、社内報をつくる側にいらっしゃいますが、読み手側だった時に何か印象に残っていることはありますか。

村上 入社した時に、一人ひとり写真を撮られて、自己PRとともに掲載されるという文化があるのですが、それが記憶に残っています。

奥田 今もそれは続いているのでしょうか。

石井 私の時は大量入社だったので残念ながらなかったんですが、基本的に今も継続しています。

村上 ただ、紹介のページも自己PRのボードを持つといったバージョンを経て、だんだん凝ってきています。

石井
 キャリアロードマップをすごろく風にしたり、ゲームのRPGをモチーフにして困難を乗り越え、最後に王様=社長にたどり着くという年もありました。

村上 他社も同じようなことを始めるので、追随を許さないところに行こうと(笑)。

荒田 単に奇をてらっているわけではなく、紹介する人数がかなり多いので、普通の形式だとだんだん飽きてしまって最後までちゃんとみてもらえません。そのことへの対策でもあります。

宮崎 入社当日に新入社員全員を撮影するので、全員の状況を把握しながら呼び出す係や撮影をサポートする係など、分担してこちらも終日全員体制で取り組みます。

奥田 一大行事ですね。

荒田 毎年春の号は新入社員特集なので、手元に残される率が一番高い号です。

奥田 それにしても皆さんほんとうに楽しそうに語られますね。

全員 (華やかに・笑う)

村上 私はここにきて4シーズン目なのですが、前任者が社内報に深い思い入れをもっていて、厳しく指導いただいたんです。企画だけでなく構成も表現も全部考えなさいと。タイトル一つにもすごくこだわられていて、最初はなかなかGOが出ないこともありました。

宮崎 その方の教えの一つに「自分たちが楽しくないと読み手に伝えることはできない」というのがありまして……。

石井 確かにその通りで、制作の姿勢は誌面を通じて読み手に伝わると思っています。

荒田 いろいろありますがとにかく楽しくやっていきたいと全員思っています。

奥田 心がけもすばらしいですが、皆さんのコンビネーションもさすがですね。BCNも見習わないといけません(笑)。

読んでもらえるしかけと
知ってもらえる努力

奥田 社内報の判型と発行頻度は?

荒田 A4判で基本的には20ページです。発行頻度は年4回。昨年リニューアルしてオールカラーにしました。

奥田 春の号は新入社員特集ということでしたが、他の3号はどのような内容なのでしょう。トップの方のお話とか?

村上 社長や役員のメッセージは、ライブ中継していたものが動画でアップされるようになったので、単に内容をテキスト化するのではなく、紙ならではの切り口を模索しています。対談形式にするとか、号全体のテーマを決めて全ページを通してストーリー性をもたせるとか。

石井
 ビジネスネタでも新しい技術などは、どうしても難しくなってしまいがちなものですが、マンガやイラストを使ってやさしくわかりやすくするというような工夫もしています。以前、知財部の新しいサービスをマンガ形式で紹介して部門から好評をいただきました。

宮崎 ビジネスに直接には関係しないオフネタも入れています。社内報にオフネタは要らないという意見もあるんですが、外回りから帰社して一息ついている時に、ちょっとおもしろそうなページがあるなと目にとめてもらえればいいかなと。そこがフックになって他のページも読んでもらえればうれしいですし。

荒田 トップにもご協力いただき、新年号で筆と墨で書初めをしていただいたり(笑)。

奥田 それはいい企画だなあ。BCNでもやろうかな(笑)。読んでもらうためにさまざまなしかけをされているんですね。

石井 新しい試みとしてAR(拡張現実)にも挑戦しました。ARマーカーを読み込んでタップするとさらに情報を伝えるとか。お客様のところにうかがった時に、「うちはこんなこともできますよ」というデモのような形で使って会話のきっかけにしてもらえたらいいなと。

奥田 反応はいかがでしたか。

村上 最初の号はアプリ自体をダウンロードしなければいけないというハードルもありながら15%くらいが試してくれました。以後何度かトライを続けています。

宮崎 タブレット端末が配布された時にも試してみたんですが、工業商品向けのものを社内報に使ったので技術的に難しいところもあり、誌面との連動に少し苦労しました。

奥田 現在もやっておられるんですか。

石井 ARのバージョンを上げるか、まったく違うものにするか検討しようということで中断しているところです。

奥田 頑張っておられますねえ。

荒田 読んでいただく工夫だけでなく、社内報の認知度を上げるための活動もしています。昨年末は各フロアの納会におじゃまして「広報です」ってインタビューにうかがいました。

宮崎 自分が参加する研修に社内報を持っていきPRに努めるとか。また社員だけでなくご家族にも読んでいただけるよう、2016年のリニューアル後は表紙に「ご自宅でもどうぞ」という旨のメッセージを入れたり……。

村上 けっこう地道な努力をしています(笑)。
(つづく)

■社内報の現在と未来を継承と革新で探求する――第193回(下)
富士通マーケティング 経営戦略本部 コーポレートコミュニケーション統括部 広報部

 

メンバー必携。
4人4色の取材手帳

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 始まりは社内報の制作会社のデザイナーさんが使っていたことから。5mm方眼の用紙は切り取り用のミシン目があるので整理したアイデアを切り取って会議に持ち込むことも。表紙の色は毎年のラッキカラーを1色取り入れ、それ以外は各自の好みで決めるとか。