日本IBMの新たなパートナーとの取り組み「IBMソリューションリーグ」は、IBMテクノロジーと連携して動作する付加価値の高いソリューションを持ったパートナーと協業し、共にビジネスの拡大を目指す取り組みだ。現在までに50社を超える企業が参加、すでにIBMやパートナー企業と連携して新ビジネスを生み出す動きも表れている。会員企業の1社であるクラステクノロジーの瀧下省吾社長は、「ソリューションの幅とビジネス機会が広がっていく」と、IBMソリューションリーグへ期待を示す。

新たなビジネスの可能性を広げる「IBMソリューションリーグ」

 IBMソリューションリーグは、日本IBMが2018年8月に開始した新たな取り組みで「IBM Cloud」を含むIBMテクノロジーと連携して動作する、高価値のソリューションを持ったパートナー企業が会員として参加している。会員企業の持つ多様なソリューションと、動作検証済みのインフラ、ハードウェア、ミドルウェアを組み合わせることによって、IBMと会員企業、サービス構築パートナー、販売パートナーにとっての新たなビジネスチャンスを生みだしていこうとする戦略的な取り組みだ。

 会員企業は、日本IBMから最新のテクノロジーに関する情報提供や、共同でのプロモーション展開といった支援が受けられる。さらに、IBMとパートナー企業の販売網を活用することが可能で、市場における認知度の向上や、新しい販路の獲得によるビジネスの拡大などが期待できる。

 IBMソリューションリーグへの参加条件は、自社で知的財産権を持ち、IBMテクノロジーでの動作検証が行われている使用許諾・利用許諾型のソリューションあるいはパッケージを持っている企業であり、最終的にはIBMが審査の上、参加が認められる。18年10月24日現在、さまざまな領域で事業を展開する50企業が参加しており、現在もその数を増やしている。

統合化部品表で製造業の「ものづくり」を総合的に支援

 IBMソリューションリーグに参加している会員企業の1社であるクラステクノロジー。同社は1996年の創業以来、一貫して「統合化部品表」と呼ばれる統合データベースをコンセプトとした、生産活動全般の効率を高めるためのソリューションを提供。製造業における「設計」「生産」「生産技術」といった業務全体を総合的にサポートするパッケージとして「ECObjects」と呼ばれる自社プロダクトを展開している。

 ECObjectsの強みは、ソリューションの核となっている「統合化部品表」にある。「製造業のさまざまな業務で必要となるデータを、一つのデータセットとして統合するというのは、他のソリューションでは実現できていない、当社独自のコンセプトだ」と、瀧下社長は力を込める。
 
クラステクノロジー
瀧下省吾社長

 同社製品のユーザーには、製造拠点が世界各地に分散し、各拠点で数千人の従業員が働いているといった大規模な顧客も多い。そうした企業が業務を効率化し、事業のスピード感を上げていくに当たって、このコンセプトを高く評価しているという。ITインフラやテクノロジーのトレンドが急速に変化する中で、15年以上にわたり同社のソリューションを使い続けている顧客もいる。

 ECObjectsがサポートする動作環境は多岐にわたるが、IBMのハードウェア、「Db2」、「WebSphere」といったテクノロジーについても動作検証を行ってきた。また、企業のITインフラとしてクラウドが有力な選択肢となった際には、「SoftLayer(現IBM Cloud IaaS)」での動作検証も行った。

 ECObjectsは、ユーザーにとってビジネスの根幹となるデータを扱うプロダクトのため、システム全体をクラウドに置くことには慎重になるケースも多い。しかし、「ITコスト全般の削減が求められるようになっている昨今、特に運用管理コストの削減という観点から、クラウドに関心を持たれる方が増えているという印象はある」と瀧下社長。また、数はまだ少ないが、実際にクラウド上でECObjectsを稼働させているユーザーもいるとしている。

「新規顧客の獲得」と「他企業との連携」がリーグ参加のメリット

 クラステクノロジーは、IBMソリューションリーグに会員として加わった。瀧下社長は「さまざまなパートナーソリューションとIBMテクノロジーとを組み合わせて、より大きな販売機会を創出したいというIBM側の戦略は理解していたし、われわれも自社の製品には自信を持っている。大手製造業を中心として、すでに多くの導入実績がある点でシナジーがあると考えた」と、リーグに参加した理由を語る。

 クラステクノロジーにとってのメリットの一つは、この取り組みに参加することで、これまでリーチできていなかった新規の顧客にも、ECObjectsを知ってもらう機会が増えることだ。同社では自身でもこれまでにウェブサイトや展示会などを通じて、製品を知ってもらうためのプロモーションを行ってきたが、今回、IBMソリューションリーグに参加することで、さらなる認知度拡大を図る。

 もう一つは、IBMソリューションリーグに参加している他の企業との情報交換を通じて、最新のテクノロジーに関する知見を共有したり、ビジネスでの連携の可能性が模索できたりといった機会が得られることだ。

 実際にその成果として今年、ECObjectsのデータベース基盤として、同じくIBMソリューションリーグの会員企業であるアシストが提供する「EDB Postgres」を採用することを発表した。EDB Postgresは、OSSデータベースの「PostgreSQL」をベースに開発された企業向けのデータベース製品で、アシストが販売とサポートを行っている。アシストとの協業の背景について、瀧下社長は次のように語る。

 「これまでも『ECObjectsをPostgreSQLで動かしたい』というお客様の声はあり、動作環境としてはサポートしている。しかし、素のOSSを含めた形でのインテグレーションやサポートは、パートナーにとって若干敷居の高いものだった。今回、アシストによってサポートが提供されるEDB Postgresが動作環境に加わったことで、OSS由来のデータベースによるソリューションを求めるお客様においても、より手軽に、かつ安心して導入していただけるようになった」

 また、このECObjectsとEDB Postgresとの組み合わせによるソリューションは、横河ソリューションサービスがサービス構築および販売パートナーの1社として取り扱うことが決定している。また、IBM Cloud上でのシステム構築となる場合は、日本情報通信などのIBM Cloudの知見を持つ企業が支援するスキームもできている。企業間のこうした連携によって、「ソリューションの幅とビジネス機会が広がっていくというのは、IBMソリューションリーグへの参加で得られたメリットの一つだ」と瀧下社長は強調する。

会員企業間の連携で新たなビジネスを創出し、ビジネスの拡大が可能に

 今回のIBMソリューションリーグを通じたクラステクノロジーとアシストの連携には、関係企業各社からも期待の声が寄せられている。

 アシストの朱雀和人・ビジネス・パートナー営業本部課長は、「今回IBMソリューションリーグに参加したことで、クラステクノロジー様のECObjectsと当社が取り扱うEDB Postgresの組み合せ提案ができることになった。製造業のお客様への機能面、コスト面での選択肢が増えたことで高付加価値なソリューションをお届けすることができるだろう。今後も、これまでお付き合いのなかった企業との出会いやそこから生まれるビジネス拡大に期待している」と語る。

 横河ソリューションサービスの川崎信幸・執行役員ERPビジネス本部長ものづくり革新事業推進担当は、「当社はSIerとしてこれまで多くのECObjectsの販売、導入をしてきたが、『EDB on IBM Cloud』についてはリーグでの連携により稼働検証ができていることもあり、安心して提案することができる。当社も自社製品のアフターサービス基幹業務パッケージである『ServAir』にてリーグに参加しており、IBMソリューションリーグを通じたISV様やサービスパートナー様との出会いを楽しみにしている」とコメント。

 日本情報通信でクラウド・ソリューション事業を担当する春川文男・上席執行役員バリューインテグレーション本部本部長は、「当社はIBM Cloudに関する各種サービスの導入、クラウド環境構築、運用をトータルでサポートすることができ、今回のクラステクノロジー様、アシスト様の組み合わせ商材の導入についても企画段階から関わっており、各社と連携しながら導入・運用を支援することができる。また、IBMソリューションリーグを通じ、より一層のビジネス拡大ができることに期待している」という。

 クラステクノロジーの瀧下社長も、IBMソリューションリーグ会員企業としての今後の活動に期待を示す。「われわれは『製造業のものづくりを支援するソリューション』を、最も得意にしているという自負がある。その立場から、他の会員企業の方と情報交換や知識の共有をしつつ、連携による新たな付加価値を生みだしていくことに関心を持っている。IBMからは、IBMソリューションリーグの勉強会や交流会などを通じて、そうした機会を定期的に設けていただけるという話をいただいている。

 それぞれの企業が、自社の最も得意とする領域を持ち寄り、他の企業がどういったことをやろうとしているか、何がお客様にとっての課題となっているかを共有できる場があるということが、今後の業界全体の活性化や底上げにつながっていくだろう」と語った。