Special Issue

業務のクラウド化に伴うトラフィックの増大、対策は?

2020/02/27 10:40

【SMB向けビジネスの必須科目8】連載『SMB向けビジネスの必須科目』では、全国のSIerやIT販社が、ユーザー企業の変革をビジネスパートナーとして支えるために抑えておくべきビジネスやITのトレンドを「キーワード解説」の形で紹介していく。第8回は、「SD-WAN」を紹介する。

「SD-WAN」(Software Defined-Wide Area Network)

 SD-WANとは、LAN(Local Area Network)内においてソフトウェア技術で仮想的なネットワークを構築し、通信機器やトラフィックを制御するSDN(Software Defined Networking)の技術を、拠点間通信やインターネット回線といった広域のWANに適用したもの。

 従来の専用線やブロードバンド回線、モバイル回線で構築される拠点間の物理ネットワーク上に仮想的な別のネットワークを構築し、ソフトによって柔軟に設定・制御できるようになる。

 SD-WANが注目される背景には、ビジネス活動におけるICT利用環境の変化がある。日本マイクロソフトのOffice365やグーグルのG Suiteをはじめとする業務アプリケーションのクラウド(SaaS)化、モバイル活用の加速や働き方改革に伴うリモートワークなどの様々な要因から、これまでWANで閉じていた業務アプリケーションのトラフィックが、インターネットやクラウド向けに変化している。

 結果、ファイヤーウォールやプロキシサーバーにトラフィックが集中するなどの新たな問題が発生し、遅延やフリーズなどのトラブルが増えた。そこで従来型のWANでは対応が難しい状況となり、SD-WANによるWAN最適化のニーズが高まっている。

 SD-WANのメリットとしては、「一元管理」と「トラフィック制御」が挙げられる。ソフト制御により、現場に足を運んだり、物理的な機器にログインしたりしなくてもネットワークの設定や変更が可能で、拠点単位やアプリケーション単位などの様々な切り口でトラフィックを可視化し、利用状況を管理できるようになる。

 アプリケーションを識別し、インターネット接続が前提のSaaSや利用頻度の高いOffice365などの業務アプリケーションの通信は、拠点から直接インターネットに通信を流す「ローカル(インターネット)ブレイクアウト」という機能を活用することで、社内ネットワーク負荷を軽減させることができる。通信ごとにセキュリティなどの要件を踏まえてコストパフォーマンスのよい回線構成を実現する、ポリシーベースルーティングも行える。

 IDC Japanによると、国内SD-WAN市場の市場規模は2018年が18億6100万円だったのに対し、23年には346億7200万円に達し、23年までの5年間における年間平均成長率が79.5%と大きな市場の誕生を予測している。

 ITベンダーにとってSD-WANは、単なる通信コスト削減の訴求だけでなく、デジタル化の際に提案できるソリューションの一つという位置付けになる。また、従来のWANとは違う運用ノウハウが必要になるため、マネージドサービスのニーズも増えていきそうな勢いである。その際には、IoTシステムの運用やマネージドセキュリティサービスとの組合せといった付加価値を付けた展開も可能であり、新たなビジネスを獲得する好機となっている。


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