視点

ACCSとプログラミング教育

2021/04/28 09:00

週刊BCN 2021年04月26日vol.1872掲載

 子どもたちが論理的な思考を身につけられるようにと、小中高でのプログラミング教育が必須化され、小学校ではすでに2020年度から授業が始まっている。プログラミング教育といっても、教科として設けられたものではなく、算数や社会や音楽といった既存の科目の中で、論理的に考えられるような仕組みを使った教育が行われる。

 例えば、音楽の授業で、複数あるリズムパターンを並べれば一つの楽曲になるが、順番を変えれば別の曲になる。こうしたことを通じて、順番に指示をして結果を得る、というプログラミングの基礎を学ぶものだという。

 ただ、学校現場では、そもそもプログラム経験のある教員が皆無のところも多く、困惑していることが容易に想像できる。そこで、さまざまな教育関連企業が教材の提供を始めている。コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の理事会社で住宅地図大手のゼンリンもその一社だ。ゼンリンの教材「まなっぷ」では、パソコンやタブレット上でブロックを組み合わせて指示を与えると、隣に表示された地図に反映される。防災マップ作りや避難ルートの設定、地図上の距離から速度を計算するといった授業で使える。

 地図は情報の塊でもある。道路はもちろん、地形や川、橋、民家の配置など、子どもたちが暮らす町の身近にある情報が詰まっている。これらを使ってプログラミングをすれば、興味を持って取り組むことができる。

 同時に情報の価値や意味を知り考えることに通ずる。民家の位置や大きさは個人情報とも関係する。プライバシーを含む情報の集積であって、地図そのものは著作権の保護対象となる著作物だ。その結果、情報の価値や意味を考える情報教育を深めることになるほか、子どもの頃から地図に親しんでおくことは、身近な防災・防犯から、地政学から見た国際問題に至るまで、社会を学び考える上で、基礎的なスキルとなる。

 また、同じくACCS会員であるセガは「ぷよぷよ」を使ったプログラミング教育を小中高で実施している。ソフトウェア業界はプログラミングそのものが本業だ。教材を開発しなくても、身近な子どもたちに与える影響は大きい。ソフトウェア業界がプログラミング教育にどう貢献できるか。それぞれの企業で考えてみてはどうだろう。

 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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