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アリババ、新しいAIチップでビッグデータに対応、杭州で「雲栖大会」

2019/09/26 11:40

【杭州発】阿里巴巴集団(アリババグループ)のコンピューティングカンファレンス「雲栖大会」が9月25日、本拠地の浙江省杭州市で開幕した。新しい人工知能(AI)チップを発表し、増え続けるビッグデータに対応する方針を打ち出した。27日まで。(上海支局 齋藤秀平)

従来の路線を継続
ビッグデータは石油

 大会では、地元政府幹部のあいさつの後、アリババグループを創業した馬雲氏から経営を引き継いだ張勇(ダニエル・チャン)会長兼CEOが基調講演し、ニューリテールなど、馬氏が進めてきたこれまでの取り組みの成果について「各業界がデジタル化とスマート化をグレードアップさせている」と総括した。
 
張会長兼CEO

 今回のカンファレンスは、張会長兼CEOがアリババのトップとして初めてパートナーらに向けてメッセージを発信する場となった。世界各国から集まった参加者を前に、張会長兼CEOは「われわれのミッションは変わらない」と従来路線を継続する方針を強調し、「デジタル経済の時代において、世の中に難しいビジネスはない」と馬氏の過去の発言を引用してみせた。
 
雲栖大会の会場

 カリスマ経営者の馬氏の代わりに、中国を代表する企業に成長したアリババの舵取りを担うことになった張会長兼CEO。基調講演では、特にビッグデータに注目していると紹介し、「ビッグデータの量は幾何学的に増加し、それに対応する強力なコンピューティングパワーを持つ必要があるという新しい提案をしなければならない」と訴えた。

 さらに「デジタル経済の時代には、ビッグデータは石油であり、コンピューティングパワーはエンジンだ」と例え、今回の大会のテーマとなった「数・智」を引き合いに出し「コンピューティングパワーの開発は、最終的には『数』と『知恵』の完全な組み合わせでなければならない」と訴えた。

万里長征の第一歩
世界で最もパワフル

 張会長兼CEOが示した強力なコンピューティングパワーの実現に向け、アリババは今回のカンファレンスで、クラウドサービスで提供する新しいAIチップ「含光(Hanguang)800」を発表した。
 
含光800

 含光800は、アリババ傘下の半導体メーカー「平頭哥」が開発した。機械学習タスクの最適化に特化しているのが特徴。アリババのネット通販サイト「陶宝(タオバオ)」で、毎日10億枚の画像を識別し、消費者にレコメンデーションするタスクは、これまでの1時間から5分に短縮できるという。
 
張CTO兼アリババクラウドCEO

 チップを披露した張建鋒(ジェフ・チャン)アリババグループCTO兼アリババクラウドCEOは、チップの開発を中国の歴史と重ね合わせて「万里長征の第一歩だ」と呼びかけた。社名は伏せたものの、他社のAIチップやGPUよりも性能が優れていることも示し、含光800が「世界で最もパワフルなAIチップだ」と胸を張った。

米国勢を追うアリババ
今後の市場拡大に期待

 調査会社IDCによると、アリババクラウドは、中国のIaaS市場では40%超のシェアを獲得して1位となっている。しかし、ガートナーの調査によると、世界市場では米国勢の後塵を拝している。
 
記者からの質問に答えるアリババクラウドの幹部ら

 先行する米国勢と世界市場でどのように渡り合っていくのか。記者団の取材に応じたアリババクラウドの幹部は「われわれは、中国とアジア太平洋地域で優位に立っている。地元の顧客に必要なサービスを提供し、海外の華人が中国でビジネスをすることも助けている」と述べ、得意とする中国・アジア太平洋市場で積極的な投資を続けていることを紹介した。

 そのうえで「調査会社の見通しでは、アジア太平洋地域と中国は今後、クラウド市場が急速に成長すると予想されており、特に中国は世界最大になるとみられている」と話し、米国勢に挑むうえで、市場の拡大が追い風になるとの考えを示した。
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