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都築電気 IoT基盤を軸にAI活用を支援 デバイスから運用サービスまで網羅的にカバー

2020/08/06 09:00

週刊BCN 2020年08月03日vol.1836掲載

 都築電気は、AIやデータ分析の需要に応えるためのデータ活用サービス「D-VUE Service(デビューサービス)」を本格的に始めた。センサーデバイスからデータを収集して分析、運用する一連の流れを網羅的にカバー。生産現場や設備管理などを効率化する需要を主なターゲットとしている。センサーデバイスの制御では都築電気が長年にわたって培ってきた組み込みソフト開発の技術を応用。さまざまな種類のセンサーを統合的に管理し、かつセキュリティを確保できる。安全に十分な量のデータを確保しやすくなり、AIやデータ分析をより有効に活用できるようになるという。

AIのデータ不足の
課題を解決

 AIやデータ分析によって業務効率や品質を高めたいとするユーザー企業のニーズが高まっている。都築電気にもこうした引き合いが多く寄せられるが、AIやデータ分析を行うのに欠かすことのできない「データ」が揃わないことが大きな課題になっていた。そこでデータを集める最初の段階であるセンサーデバイス、データの伝送部分を担うネットワーク、AI・データ分析、システム運用まで一気通貫のサービス「D-VUE Service」を、この6月に本格的に立ち上げた(図参照)。
 

 例えば、生産現場やプラントの保守業務、設備管理の用途では、画像や温度、湿度、加速度、位置、傾き、光、圧力などさまざなセンサーからデータを集めるが、データ形式や管理方法がバラバラだったり、セキュリティに問題があったりと「AIやデータ分析に至る前工程のデータ収集の段階でつまづくユーザーが少なくない」(荒井克史・エンベデッドソリューション本部事業企画部部長)ことが分かった。D-VUE Serviceでは、センサーデバイスからデータを集めるIoT基盤の部分を重視した設計とし、都築電気が強みとする組み込みソフト開発の技術やノウハウも詰め込んだ。
 
左から荒井克史・エンベデッドソリューション本部事業企画部部長、
河野吉勇・イノベーション推進室担当課長

組み込み技術を
IoTに応用

 センサーデバイスを統合的に運用するには、(1)形式が異なるデータを統合的に管理する仕組み、(2)Wi-Fi、LPWA(低消費電力広域通信)、Bluetooth、4G/5Gの各種無線、有線ネットワークの統合管理、(3)情報セキュリティの三つの要素が必要となる。

 とりわけ情報セキュリティを確保するには、デバイスに証明書を入れて、それが正しいデバイスなのかの認証が求められる。センサー機能しかない単機能デバイスにも、例えばメモリ部分に秘密鍵に相当する暗号を入れることで、セキュリティを確保するといった「デバイス管理の豊富な知見が試される」(河野吉勇・イノベーション推進室担当課長)ことになる。こうした部分に都築電気が長年にわたって培ってきた組み込みソフト開発の知見が存分に生きてくる。

 IoTプラットフォームの部分をゼロから開発するのはコストや時間がかかるため、英ArmのIoTプラットフォーム「Pelion(ぺリオン)」をベースにつくり込むことにした。半導体メーカーが設計・開発しただけあり、強力なデバイス管理の能力を持ち、さまざまな形態のネットワークにも柔軟に対応できる。セキュリティを担保する機能も豊富であることから「十分なセキュリティを保って、大規模なIoTネットワークを構築するのにPelionは適している」(荒井部長)ことから採用に至った。

効率化と
品質向上に役立てる

 PelionをIoTプラットフォームとして活用しつつ、デバイスとネットワーク、セキュリティ機構の構築は、都築電気の強みをフルに活用。さらにその上のレイヤーとしてAIアプリケーションやデータ分析、これらシステム全体の運用まで含めたサービスをD-VUE Serviceとして体系化した。いくつかのデバイスを使った小規模な実証実験では、デバイス管理やセキュリティは大きな問題にならなかったとしても、「数万単位でデバイスを運用する本格フェーズに入ると、問題が一気に表面化する」(河野課長)ケースが見られたことから、D-VUE Serviceでは大規模運用に耐えられるサービス体系にした。

 D-VUE Serviceの活用では、熊本県のミネラルウォーター製造メーカーが画像センサーをAIで分析し、不良品を排除する用途で試験的に導入。また、業務用の計量包装機メーカーと協業して、画像センサーを使った食肉判別技術に関する発明を共同で出願している。食肉工場の生産ラインでは、ベルトコンベアに載った食肉の部位を作業者が識別する工程がある。スキルを持つ熟練者がロースやヒレ、バラなどの部位や品種、左右差まで細かく識別するが、これを画像センサーとAIで支援する。業務の効率化に加え、部位識別の精度を向上でき、食肉出荷のミス削減、品質向上の効果が期待できる。

 ほかにもビルの空調や照明といった電力管理や、施設や公園の植栽、スマート農業、プラント設備の管理などD-VUE Serviceは幅広い活用が見込まれている。都築電気は、組み込みソフト開発で培ったデバイスの知見、SIerとしてのネットワークやシステム構築、運用のノウハウを集約。AIやデータ分析の支援を通じてユーザー企業のビジネス拡大を推し進めることでD-VUE Service関連の受注を一段と増やしていく。(安藤章司)
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外部リンク

都築電気=https://www.tsuzuki.co.jp/