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RPAの魅力は“アナログ感”にあり――ふくおかクラウドアライアンス主催セミナー

2018/08/27 13:44

 ふくおかクラウドアライアンス(一般社団法人福岡県情報サービス産業協会 企画事業)は8月22日、福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センターにおいて、「働き方改革を支えるIT技術~RPA(事務ロボットソフト)の活用~」と題し、6周年記念事業となるセミナーを開催した。

 開催にあたり、ふくおかクラウドアライアンスの森 俊英氏が「今年はRPAの市場が一気に広がった。Excelが普及し始めたときと似ている。いいかたちで導入されていくことを期待したい」と挨拶。セミナーのテーマをRPAにした背景として、市場の盛り上がりやツールとしての役割などを説明した。
 
ふくおかクラウドアライアンス事務局、福岡県情報サービス産業協会
ビジネス開発委員長の森 俊英氏

RPAは「定型×単純×反復×大量」で活用

 第1部の講演には、週刊BCNの連載「視点」の筆者でもあるネットコマース代表取締役の斎藤昌義氏が登壇。「RPAの概要と可能性」と題し、RPAの基礎から活用方法、進化の方向性などを紹介した。斎藤氏は、RPAが有効な業務として「定型×単純×反復×大量」を挙げ、「身のまわりには、これにあてはまる業務がけっこう多い。その業務をなくしたいというニーズに応えるのがRPAである」と説明。RPAの特性については、「あくまでも現在のプロセスを効率化するもの。業務プロセスの改善にはならないため、短期的な効果になる」とし、ツールを導入するだけでなく、BPRなどを組み合わせて全体最適化に取り組むことの重要性を紹介した。

 RPAの将来については、「2025年には三分の一の業務をRPAが担うという予測もあるが、それにはAIとの融合が欠かせない」とのこと。AIの進歩によって、自律的に動くRPAの登場も予測されているという。最後に斎藤氏は、「RPAは雇用を奪うという声もあるが、余力が生まれると解釈していただきたい。RPAは業務品質の向上に貢献し、真の働き方改革を実現する」とし、会場にRPAを正しく活用することの重要性を訴えた。次に週刊BCN 編集委員の畔上文昭が登壇。「RPAが必要とされる理由とITトレンドからみた将来像」と題し、IoTやAI、量子コンピューターといったトレンドにおけるRPAの立ち位置や役割、将来像などを紹介した。
 
ネットコマース代表取締役の斎藤昌義氏

RPAで“属人化”を“見える化”

 第2部は、福岡におけるRPA導入事例の紹介。最初に登壇したシティアスコム 営業企画部副部長の林田利彦氏は、「RPA導入における課題と今後の展望」と題して自社の取り組みを紹介した。RPAに取り組むきっかけは「働き方改革」。同社は中期経営計画の目標として「売上拡大」「新規ビジネス」「グループ拡大」を掲げているが、実現するにあたって人員を増強するのは容易ではない。同じ陣容で目標を達成するには、業務の効率化と品質向上が欠かせない。そこで注目したのが、RPAというわけだ。RPAの対象は、ROIの観点からシステム化投資の対象からもれた業務。主にExcelで代替され、作業が属人化していた。「まず、改善対象業務一覧を作成し、各部門でサンプルとして1業務を選定し、RPAを検証した」と林田氏。製品の選定にあたっては、サーバー型とデスクトップ型の両面で検討し、「初期導入だけでなく運用面も含め、ロボットの長期的な活用イメージが描けているかを選択のポイントとした」という。とはいえ、現実的には長期的視野よりも、結果を出すことを優先。シティアスコムは、NTTデータの「WinActor」を選択した。2018年度中に75の業務を対象にRPAの導入を予定している。社内での導入を経験した林田氏は、「業務の効率化を目指すといっても、単純にはいかない。同じ部署でも、隣の人とやっていることは同じではない。その属人化している部分をいかに見える化できるかがカギ」とRPA導入のポイントを紹介した。シティアスコムは今後、RPAを作業者のサポートという位置づけから、一人の社員として機能するような活用方法を模索していく予定である。
 
シティアスコム 営業企画部副部長の林田利彦氏

 次に、富士通エフサス 西日本フロントサービス支援部の今枝健太郎氏が登壇。「社内実践から見えてきたRPA導入の勘所」と題し、社内での取り組みを紹介した。富士通エフサスでは、働き方改革の推進により、残業が制限されているため、業務の効率化が必要とされていた。また、管理システムがグループ共同利用のため、社内のニーズに応えるための補完的な業務が発生していた。そこで、補完業務を効率化するために、RPA導入の検討が始まった。「デスクトップ型のRPAを中心に、集計作業はオブジェクト型、テスト作業には画像型など、特性に応じた製品を選定し、トライアルを実施した」と今枝氏。結果、SE部門では広告資料の作成に120時間かかっていたものが、集計作業の自動化により、10時間程度になるなどの効果が出た。今枝氏によると「定型業務の作業工数作成により、数か月でライセンス費用が回収可能」との判断に至ったという。また、属人化していた集計業務が、RPAにより、見える化と標準化ができたと評価している。一方で、課題もみつかった。「SE未経験者には、ロボットの作成が難しい。ロボットの作成を任せるも、手戻りが発生しやすく、SEがやるよりも多くの工数がかかった。また、RPAを稼働させるにあたって、夜間や週末にロボットが稼働することから、人間ではないことを証明したり、セキュリティポリシーを変更したりといった対応も必要になる」と今枝氏は説明する。さらに、操作するシステムのレスポンスを考慮した待ち時間の設定、画面認識の精度をあえて下げるといったパラメータの設定方法など、安定動作を実現するためのコツを紹介した。最後に今枝氏は、「条件分岐はなるべく使わない」など、RPA導入に際しての技術的な留意点を紹介した。
 
富士通エフサス 西日本フロントサービス支援部の今枝健太郎氏

 それぞれ講演では、RPAが稼働している様子を紹介する動画や、RPAのデモンストレーションを使った解説もありイメージしやすい内容だったと、参加者から高い評価を得ていた。RPAは24時間稼働が可能で、コピー/ペーストの作業などは人間よりもはるかに高速で実施するが、システム間のデータ連携のスピードにはまったく及ばない。とはいえ、RPAがオペレーションしているところは、「人間的でアナログ感があり、親しみやすい」という感想をもつ参加者もいた。
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