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サービス事業拡大へ 米国向け生産は中国外に移管を検討――Dynabook

2019/07/21 13:00

週刊BCN 2019年07月15日vol.1784掲載

 Dynabookは7月9日、報道関係者向けの事業戦略説明会を開催し、従来主力としてきたPCの製造・販売に加え、サービス事業を拡大する方針を発表した。来年1月のWindows 7サポート終了に備えてPCの入れ替えを行う中堅企業向けに、マイクロソフトのPC管理サービス「Enterprise Mobility+Security(EMS)」の販売を8月1日より開始する。また、ウェアラブルディスプレイを活用した作業支援システムなどソリューション商材を拡充し、今年度中にサブスクリプション型のサービスとして展開を図る予定。同社全体の売上高のうち、サービスの比率を早期に20%まで高める考え。

Dynabookの覚道清文社長(左)と日本マイクロソフトの梅田成二執行役員

 EMSは、認証・リソース管理サービスの「Azure Active Directory Premium」や、デバイス管理サービスの「Intune」など、PCを管理するための複数のツールを組み合わせたソリューション。クラウドサービスとして提供されるため、企業は自社で管理サーバーを設置することなく、インターネット経由でセキュリティアップデートの適用や、アクセス権の制御、データ暗号化などを行うことができる。

 Dynabookでは、従業員数100~1000人程度の企業では、PCの台数に対しIT部門の人的リソースが不足していると判断。Windows 10への更新に合わせて、より効率良くPCを管理できる仕組みを求める中堅・中小企業が増えるとみて、PC本体だけでなくPCを管理するためのサービスも合わせて販売する。DynabookのエンジニアがEMSの導入支援、ヘルプデスクや運用業務の代行などを行い、管理者の負担を軽減する。他社製のPCが混在している環境に対してもサービスを提供する。

 同社は昨年10月に東芝からシャープに事業譲渡され、今年1月に旧社名の東芝クライアントソリューションから現社名へと社名変更した(商品ブランドは小文字の「dynabook」)。昨年度上期(2018年4月~9月)の営業損益は赤字だったが、覚道清文社長によると「シャープ流のコスト管理で現場までコスト感覚が浸透したほか、鴻海(ホンハイ)グループと一体での調達による部材コストの低下」といった効果が生まれ、下期には早くも黒字転換を達成した。今年度も営業黒字を見込む。「年単位での黒字を定着した後に上場申請したい」(覚道社長)といい、21年度中の国内株式市場への上場を目指す。

 G20サミットにあわせて開かれた米中首脳会談の結果、PCに関する追加関税の発動は見送られたが、覚道社長は「米国政府機関の調達規定では、中国での生産だと入札に加われない。米国政府の案件を取るためには、生産拠点を移す必要がある」と述べ、全体の約1割を占める米国向け製品の製造を、今後台湾やベトナムへ移管することを検討していると表明した。(日高 彰)
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Dynabook=https://dynabook.com/