1万ドルから5万ドル程度の投資でアンテナを設置し、近隣の数百件程度の顧客へ無線によるインターネットへのブロードバンドアクセスを定額で提供する小規模ISP市場が、全米で1100企業を超えるまでに成長してきている。

 Metricomの最近の倒産を見るまでもなく、米国において大手企業による定額無線ISPへの参入はことごとく失敗している。その結果、大手不在の無風地帯と化している米国の定額無線ISP市場は、不況の風が続いているなか、小回りの効く零細企業にとって恰好の投資対象となっているようだ。

 また、その事業規模の小ささから、現在までのところ大手の参入を迎え撃つまでには至っておらず、全米に広がる零細定額無線ISPは、当面は確実な収益構造を謳歌している状況だ。

 従量課金制とはいえ、携帯電話やPHSによる快適なインターネットアクセス手段が着実に市場へ浸透しつつある日本の状況と違い、現在の米国で、もし携帯電話を使ってパソコンをインターネットに接続しようとすると、そのデータ転送速度は、例えばCingularで9600bpsの従量課金制という、時代錯誤もはなはだしいような状態が今だ続いている。

 この壁を打ち破るべく、90年代初頭に米国市場に登場したMetricomは、専用無線モデムを介した22kbpsの定額無制限接続を早期に実現し、その時点では世界市場の最先端を走っていたはずだった。

 しかしその後の128kpbs対応で資金を使い果たし、不況による市場の投資抑制傾向に阻まれ、資金調達の道を断たれたことでその命運が尽きてしまった。米国大手キャリアのほとんども定額無線ISP市場への参入を試みながら、十分な伝送速度と品質を確保できないままにその全てが撤退の憂き目に遭っている。(米サンノゼ発)