北斗七星

北斗七星 2002年1月7日付 Vol.923

2002/01/07 15:38

週刊BCN 2002年01月07日vol.923掲載

▼世界の目から見た日本人の評価は、良きにつけ、悪しきにつけ“生真面目さ”だろう。決められたことをきちんとやり、しかもそれに慣れると、今度はより効率的にできるよう努力する。日本の製造業に繁栄をもたらしたのは、そんな遺伝子を脈々と受け継いできたからかもしれない。だが、いま製造業の自信が揺らいでいる。どんなに几帳面に頑張り、努力しようとも、もはやコスト面で中国などに勝てなくなっているのだ。

▼「日本は大変な資産をもっていることに気付いていません。これは中国にもインドにも簡単には真似できません」。経済情勢に不透明感が増すなかで、最近ある人からこんな心強い意見を聞いた。バイオ関連ビジネスに身を置く同氏によると、ゲノムに象徴されるバイオインフォマティックス(生物情報科学)の分野では、日本に蓄積された貴重な資産が今後有力な競争材料になるという。その資産とは何か。「日本人は生まれてこの方、学校や会社で幾度となく健康診断を受けてます。その蓄積された膨大なデータです」。

▼1人1人の遺伝子情報を分析し、各人に適した治療を施すオーダーメード医療を実現していくには、様々な人の基礎データが必要となる。この際、健康診断の制度が確立され、しかも几帳面に受診を重ねてきた日本人のデータは非常に貴重になるそうだ。こうした蓄積は一朝一夕に出来上がるものではない。今後の課題は、紙に残されてきたデータをいかに効果的にデジタル化するかにある。そこで力強い助っ人となるのが日本のITだ。電子化作業はもとより、医療現場の遺伝子分析にも高度な情報処理技術が力を発揮する。日本の「IT利用技術立国」としての可能性はこんなところにも秘められている。
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