北斗七星

北斗七星 2002年6月10日付 Vol.944

2002/06/10 15:38

週刊BCN 2002年06月10日vol.944掲載

▼先日、中国出身のあるコンサルタントの方と話をしていた時のこと。たまたま話題がNECのパソコン生産に及んだ際、「NECは生産の7割を中国に移そうとしてますが、非常にリスクの大きいことです。政変や大幅な政策転換があった場合、パソコンの調達が滞り、事業は大打撃を受けるからです」とのコメントが返ってきた。メーカーにとって製造コストの引き下げは至上命題。よって、中国への生産移転は時代の流れだが、問題はその比率。「私なら7割もを一国に集中させるようなことは勧めません」。

▼業界では生産のアウトソーシングやEMSの利用が活発化しているが、一方でソニーは半導体の内製化に取り組んでいる。収益に大きく貢献を始めたプレステ2(PS2)に搭載される半導体の投資戦略を加速。ソニー・コンピュータエンタテインメントの久夛良木健社長は、「PS2全体の製造コストのうち、半導体部分が70%以上を占める」、「外注に頼っていてはコストが高く、(PS2が)売れる時期に(肝心の半導体が)手に入らない」と内製化の意図を語る。

▼中国が“世界の工場”へと発展するなか、生産拠点をどう再配置するかは、経営陣にとって重要な課題だ。製品の心臓部は日本で生産し、難しいノウハウを必要としない部分は海外に移転する。これが日系企業の最近の傾向で、国内に限れば脱メーカー色が顕著になりつつある。だが、果たして海外移転がすべて最善の選択なのだろうか。「人件費の安さを理由に生産移転を進める企業が多いが、製造コストに占める人件費の割合は必ずしも高いわけではない。むしろ、海外に拠点を移すことのリスクを考える必要がある」。シャープの町田勝彦社長が数年前に語っていた言葉を思い起こしてしまった。
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