旅の蜃気楼

水野幸男先生

2003/02/03 15:38

週刊BCN 2003年02月03日vol.976掲載

▼その日のメインディッシュはロッシーニ風の牛フィレ肉。1995年2月23日、NECスーパータワーの役員レストランでフランス料理の昼食をご馳走になった。オペラ歌手を思わせるバリトン調のゆったりとした声とその物腰は、水野幸男さんを語るときには欠かせない。「美味しいですね」。「ええ、ほんとうに、おいしいですね」。ゆったりとかみ締めるように言葉を遣う人であった。食事を味わいながらウィンドウズ95の話をした。何の拍子にか、「学問とは何だと思いますか」。そんな問いを投げかけられた。さてこんなに困ったことはない。「学問とはですね。本質を見極めることですよ」。講義のときは多少高い声であった。記念に当日のメニューにサインをもらった。

▼米スタンフォード大学で「水野」というと、お二人を指すらしい。亡くなられた水野幸男先生と、水野博之先生だ。以前BCNで対談を企画した。これは水野幸男さんの希望で実現した。「僕がスタンフォードで講義したとき、どうも僕を水野博之さんとごっちゃにしてんですよね」。そういえば、年恰好、とくに頭の姿かたちが似ているでしょうと、大笑い。お二人の水野先生は実に愉快そうだった。水野幸男さん、東工大卒、NEC入社、世界のソフトウェア工学を牽引した。情報処理学会で93、94年と会長を務めた。

▼鈴木慶さんがソフマップの社長だった頃だ。「鈴木さんにお会いしたいですね。どんな人ですか。よく評判は聞くんですけどね」。このときもフランス料理だったような気がする。3人でナイフとフォークを使い、慶さんの軽機関銃のような会話を楽しみながら(どうだか?)盛り上がった。後日連絡が入って、「いい青年ですね」。昨年末、慶さんと会った。「水野さんから時々、ご連絡を頂くんですよ。嬉しいですね」。こんな方であった。さようなら。水野幸男先生。拝。(本郷発・笠間 直)
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