「一番好きなジャズピアニストは?」と聞かれたら、私はもちろん今は亡き名ピアニスト、ビル・エヴァンスと答えるでしょう。

 「Someday my prince will come」、「My foolish heart」など、数々のすばらしい演奏がありますが、そのなかで一番のお気に入りは、エヴァンスのお兄様の娘のために書かれた「Waltz for Debby」。メロディーがとっても美しく、リリカルで繊細なピアノの音色にハマッテしまいます。私のセカンドアルバムCD「Sings In L.A. For You」にも入っていますよ。ぜひ聴いてね!

 ハマッテしまうと言えば、エヴァンス様に夢中になっている頃、下北沢にあるジャズショットバー「SLUGS」に通っていました。

 ちょうど1枚目のジャズデビューアルバム「Reyna」の制作に取り組んでいるときで、すごく楽しい反面、いろんなプレッシャーで精神的にはかなり大変でした。ポップスを歌っているときのレコーディング方法とは違い、歌も含めた同時録音が多いためです。一度上手くいかなくなると同じところを何度も録音し直し、それこそもう、挫折感にハマッテしまい、夜も眠れないそんな状態。(ちょっとオーバーかな?)

 そんな時、心を慰めてくれた場所が、「SLUGS」なのです。

 らせん階段を登った4階にあるそのお店は、数千枚のレコードコレクションのなかからオーナーが選曲し、そのレコードジャケットをさりげなくカウンター横に飾ってあります。ナカミチのスピーカーから優しくほどよい音量でジャズが流れ、薄暗いお店の雰囲気はまるでニューヨークはグリニッジビレッジの古いバー。

 そこで、エヴァンス様の「Waltz For Debby」が聴きたくなり、マスターにリクエスト。

 やっぱりこの曲!! 落ち込んでいた気持ちがすーっと楽になり、肩の力を抜いて頑張ろう! という気持ちにさせてくれたのです。そして、この曲にピッタリの素敵なカクテル「ジャック・ローズ」を初体験して、またまたハマッテしまったのです。

 「Bill and SLUGS and Jack Rose」 に乾杯!

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●Waltz For Debby
1956年、作詞/ジーン・リース、作曲/ビル・エヴァンス

[村本玲奈]
ジャズシンガー。兵庫県生まれ。血液型はA型。大阪のダンスコンテストに出場し、2度優勝。その奨励金をもとに単身渡米、さまざまなジャンルの音楽に接する。帰国後、歌手デビュー。1986年から本格的なジャズシンガーを目指し、ライブハウスを中心に活動中。