北斗七星

北斗七星 2003年6月16日 Vol.994

2003/06/16 15:38

週刊BCN 2003年06月16日vol.994掲載

▼IT業界で「TCO」という言葉は、今や蕫公用語﨟のごとく使われる。日本語では、IT投資の「総保有コスト」を意味する。景気の低迷から、この「TCO削減」という言葉が声高に叫ばれる一方、言葉に幻惑される場面も多くなった。あるシステム担当者は、「『TCO削減』を口にすれば、今日的課題に取り組む企業と受け取られる」。だが、実際は本来の意味を知らずに使っている場合が多いとの指摘だ。

▼TCOを初めて指摘したのは1996年、米調査会社のガートナー・グループだ。企業がパソコンを大量導入した時代に、「ハード・ソフトウェアのみならず、管理コストなどオペレーション費用も入れた投資計算」の重要性を説いた。このTCOを世に流布したのがオラクルのラリー・エリソンCEOと言われる。同社は当時、クライアント(パソコン端末)側にアプリケーションソフトを持たせず、サーバーで集中管理する「ネットワーク・コンピュータ(NC)」を打ち出した。だが、好景気に沸くなかで市場の反応は鈍かった。

▼ある外資系のIT企業関係者によると、米国IT業界では最近、「リセンタライジング(中央集中管理の復活)」という言葉が使われ始めたという。大手企業などが事業所別に設置したサーバーを中央で集中管理する考えだ。数年前のNCの思想に根幹は似ている。パソコン大量導入の時代は終焉したと言える。そんな時代だからこそTCO本来の意味を再確認したい。
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