旅の蜃気楼

「ごくろうさま」

2003/10/13 15:38

週刊BCN 2003年10月13日vol.1010掲載

▼積丹半島の漁村に泊まった。朝早く目が覚める。そこは日本海。朝陽の差した広々とした海原に、雲丹を採る船が8隻ほど、ぽかり、ぽかりと、少し傾いて浮かんでいる。風が波間をなめている。実にのどかだ。夕食にはその雲丹が出た。生であったり、どんぶりであったり、焼いてあったり。雲丹の山盛りをふんだんに食べたことはない。東京に戻って寿司屋に行って、雲丹を見て、ゲップが出たらどうしようかと、心配するほどであった。

▼そこは民宿で、あるじは漁師が本業。大広間にはりっぱな額が飾ってある。消防団員の永年勤続の表彰状だ。「いつも緊張しているね。いつ何があるかわからないからね。消防に入ったのは20歳のとき。危険なこともあったよ。いろんな思い出があるね」。鍛え上げた身体。消防団長の肩書き。隣で夫人が、表彰状を見ながらにこにこしている。いい光景であった。雲丹はその人が採ったものだった。

▼10月は情報化月間だ。アイ・オー・データ機器の細野昭彦社長が情報化促進に貢献した個人として、経済産業大臣の表彰を受けた。奥様と一緒に表彰状を手にする姿に、「ごくろうさま」と、エールを送った。これまでの努力を労いたい。北陸3県は他県に比べると、システム関連の会社が栄えている。なかでも細野さんは「地元の繁栄」を意識して、事業展開することも多い。業績も右肩上がりになってきた。さらなる繁栄を期待したい。一隅を照らす人は、意外に身近にいるものだ。ありがたいことだ。(本郷発・笠間 直)
  • 1