BCN FORUM

バランスが大切

2004/04/19 15:27

週刊BCN 2004年04月19日vol.1036掲載

 個人情報漏えい事件に踊らされている──。IT人材教育のグローバルナレッジネットワークの尾藤伸一社長は、企業が施す情報セキュリティ対策の現状をこう斬る。

 個人情報漏えい事件の多発により、「危機管理」に疎いとされる日本で、コンピュータセキュリティに対して関心が高まっていることは確か。IT資産管理ソフトや脆弱性診断サービスは、今やセキュリティビジネスのトレンドとなり、セキュリティビジネスを手がける企業も揃って力を入れている。

 しかし、「ウイルスの発生や、個人情報漏えい事件で、まるでブームのように特定部分だけのセキュリティ対策を強化することしか考えていない」と尾藤社長は嘆く。企業トータルのセキュリティ戦略を練らないで、高いセキュリティと利便性の両立を考えていないことを深刻な問題点として指摘して、「情報漏えいを恐れるあまり、組織、社員をがんじがらめにして、ITの便利さを損なわせようとしている」とも。

 情報漏えいがもたらす被害は、企業にとって「信用の失墜」という取り返しのつかない事態を招く。だが、計画性のないセキュリティ対策が元で生産性が下がってしまったら本末転倒。セキュリティを高めながら、ITの持つ特徴を生かす、という高い次元でのバランスを常に考慮しなければならない。
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