BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『グーグルが描く未来 二人の天才経営者は何を目指しているのか?』

2010/09/09 15:27

週刊BCN 2010年09月06日vol.1348掲載

 ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリン、世界に冠たるビッグビジネスの二人の創業者の素顔は、“クラウド”に覆われていて、見えづらい。今回取り上げるのは、その雲を吹き払い、偉大な経営者を陽光の下に晒して、グーグルという怪物企業がどんな方向へ向かおうとしているかを明らかにしようと試みる本である。

 企業は、経営者の器以上には大きくならないといわれるが、ラリーとサーゲイはどんな人物なのか。著者は、ともにユダヤ人である二人の生い立ちからたどっていく。ラリーの祖父は全米トラック運転手組合に所属する、左翼の自動車工場労働者だった。一方、サーゲイの父親のミハエル・ブリンはモスクワ大学で学んだ優秀な数学者だった。しかし、旧ソ連での反ユダヤ主義に翻弄されることとなり、フランスを経由して米国に落ち着いた。「僕らはどんな状況でも、なんとかやっていく術を学んだんだ」(サーゲイ)という発言は、こんな境遇が生み出したものとみられる。その半面、著者の表現によれば「度を越した秘密主義者」であり、そのことが、あちらこちらでグーグルが批判・中傷の的になる要素ともなっている。

 話題を振りまいた「中国市場への進出と撤退」「ヤフーとの提携」など、グーグルは常に大きな波を引き起こしてきた。そして、検索の先は――。この本のミソなので詳しくは触れないが、電話会社になるかもしれないし、宇宙の時代を切り開こうという構想もあるらしい。(止水)


『グーグルが描く未来 二人の天才経営者は何を目指しているのか?』
リチャード・L・ブラント 著 土方奈美 訳
武田ランダムハウスジャパン刊(1700円+税)
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