BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『国際競争力を創るグリーンIT 世界の低炭素化を引き込む事業戦略』

2011/06/23 15:27

週刊BCN 2011年06月20日vol.1387掲載

 東京電力福島第一原子力発電所の大事故に直面した今、日本のエネルギー政策は岐路に立たされている。本書は、エネルギーとITを組み合わせた“グリーンIT”に焦点を当てて低炭素化を促進しつつ、国際競争力を高められるエネルギー政策とは何かを考察している。

 この夏、首都圏や東日本、関西地区では、電力消費のピーク時15%カットを掲げ、総出で節電に取り組む。過去を振り返れば、1973年と79年の二度にわたるオイルショックを経て、日本は製造業を中心に90年までにエネルギー効率を約2倍に高めてきた。一方で、製造部門以外の、例えばビルや家庭、家電、IT機器といった分野ではどうか。共同執筆の一人である野村総合研究所(NRI)の古明地正俊上席研究員は、「個々の省エネには限界があるのは明らかで、全体最適の手法を用いた仕組みづくりが求められている」として、すべての電力消費単位をセンサーやネットワーク、情報処理技術と組み合わせてコントロールするスマート技術などを詳しく分析している。

 むろん、「省エネ」だけでは経済成長を続けるのは難しい。太陽光や風力、地熱など新しいエネルギー生産「新エネ」との両立が必須だ。本書ではエネルギー技術(ET)と情報技術(IT)を掛け合わせたグリーンテクノロジー(GT)のイノベーションが、経済成長の原動力になると説く。エネルギー自給率わずか5%の日本が、今何をすべきなのかのヒントを数多く記述している。(寶)


『国際競争力を創るグリーンIT 世界の低炭素化を引き込む事業戦略』
椎野孝雄、古明地正俊、中川宏之、伊藤信二 著 東洋経済新報社刊 (1800円+税)
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