旅の蜃気楼

名前に込めた日中への思い

2012/03/15 19:47

週刊BCN 2012年03月12日vol.1423掲載

【済南発】済南の中華料理店で饅頭を食べた。NECソフト済南の木田橋龍さんを訪ねた時のことだ。日本でも中国でも、出かけた土地の料理を食べることにしている。

▼中国語を母語とする木田橋さんは、1997年に日本に帰化した。元の名は劉さんだ。「名前の由来ですか」と木田橋さん。日本を逆にすると、本日。本の字の横棒を動かして日の字の中に縦に置くと田。これで“木田”。日中の架け橋になりたいという思いで、それに“橋”をくっつけた。木田橋さんが済南にNECの子会社をつくったのは2005年。オフショア開発で事業は順調に成長している。社員は430人、嘱託社員を含むと750人になる。この4月には青島に子会社をつくる。社員は全員が日本語を話すという。

▼木田橋夫人が日本語の学校を設立して、社員に日本の言葉と文化を徹底して教えている。「言葉を話すにはその国の文化を学ぶ必要があります」と木田学校の木田橋麗校長。会社の成長の秘密はそのあたりにありそうだ。学校のショーケースには、ぎっしりと日本文化が詰まっている。「女性が着る浴衣は15着用意してあります」。ケースの上には皇族の写真が5点展示してある。「生徒はとても日本文化に興味をもっているんですよ」。木田橋さんが名前に託した日中の架け橋は、どんどん大きくなっている。

▼衣食住でその国に親しむことが理解への第一歩だ。饅頭はこの土地の名物らしい。中国の仕事には宴席がつきものだ。昼からの宴席もある。コーリャンを原料としてできた白酒が乾杯のお酒として一般的だ。度数はウイスキー並み。これを小さなグラスでひと口で飲み干す。お互いに目をみつめ、人物観察をしながら、杯を重ねる。中国料理には白酒があう。木田橋さんの心意気に、また盃を重ねる。(BCN社長・奥田喜久男)

木田橋麗校長は、日本文化がぎっしり詰まったショーケースを見せてくれた
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