BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『「日本」の売り方 協創力が市場を制す』

2012/03/29 15:27

週刊BCN 2012年03月26日vol.1425掲載

 耳慣れない言葉だが、何となく意味は伝わってくる「協創力」。著者は、「人と人との思いの連鎖を意識して使うこと。そして、人と人との思いのつながりを駆使して問題を解決するため、関係するみんなが集まる『場』をつくること。(中略)これを活用してみんなで問題解決をデザインするために力を出し合うこと」と定義している。そして、こうしたネットワークをつくることができる企業、実践している企業が強い競争力をもつという。

 なんだ、そんなことなら大なり小なりどこの企業でもやっているじゃないか、と思ったあなたは正解。著者によれば、日本人の多くは仏教哲学に親しみ、禅の影響による思索・創造の協働性を重視し、自然崇拝と再生信仰の伝統をもち、企業を社会の公器として捉えているがゆえに、「協創力」の素養を豊かにもっているのだという。仏教、禅、自然崇拝、再生信仰というと宗教のように聞こえるが、日本人は意識せずにこれを実践的な力にしている。外国から社会システムの解決策を輸入する時代は終わった。日本は日本なりの方法で経済再生を果たそう──本書のタイトルには、そんなアピールが込められている。

 学問としては「システムズ・アプローチ」というそうだが、これは社会のさまざまな問題を解決する実践的な方法論として体系化され、すでに成功事例が多く蓄積されている。後半部で紹介しているこれらの事例を読めば、「協創」がいかに多くの分野にまたがって力を発揮しているかが理解できる。行動のきっかけになる一冊だ。(叢虎)


『「日本」の売り方 協創力が市場を制す』
保井俊之 著 角川書店 刊(724円+税)
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