BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『七つの会議』

2013/02/14 15:27

週刊BCN 2013年02月11日vol.1468掲載

 七つの会議? 会社のなかでの会議のあり方でも書いてあるのかと思ったら、まったく違う内容だった。読後感は、本音をいえば「しんどい」のひと言だ。

 小説の舞台は、総合電機メーカーの子会社、東京建電という会社。白もの家電がじり貧になり、住宅設備関連の製品群を事業の柱にしようと、営業部には厳しい販売ノルマが課されていた。毎月の営業会議では目標未達のチームの課長は、部長に罵声を浴びせかけられ身をすくませるのが常だった。1970年代のモーレツ主義全盛の頃を彷彿させる。そんななかで、若手の坂戸課長は目標を連続達成し、ホープと目されていた。

 ところが、とんでもない事態が明るみになった。ノルマに追われた坂戸課長は、部品(ネジ)のコストを抑えて粗利を稼ぐために、外注先と共謀して検査不合格品を納入させ、破格の低価格で製造した折り畳み椅子を武器に、大口の受注先を開拓していたのだった。最初の危険信号は、その欠陥ネジを使った椅子がすぐに壊れるという消費者からのクレームとなって現れた。そこまでならなんとか対処のしようもあるが、東京建電が納入した欠陥ネジで組み立てた座席は、航空機や電車にも使われていることが判明した。もしリコールならば、損害賠償などで1800億円を要すると試算された。子会社はもとより、親会社も吹っ飛ぶほどの巨額だ。そんな事態に直面して、社長が会議で決断したこととは……。経営トップ、取締役、管理職など会社を構成する者たちの思惑の交錯が、真実味をもって迫ってくる。(仁多)


『七つの会議』
池井戸 潤 著
日本経済新聞出版社 刊(1500円+税)
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