BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『「低学歴国」ニッポン』

2023/06/02 09:00

週刊BCN 2023年05月29日vol.1970掲載

教育の課題を多面的に分析

 「学歴」と聞くと、どのような印象を持つだろうか。大辞林は「学業についての経歴」と「どういう学校を卒業したかという経歴」の両方を記載している。就職活動における学歴フィルターをはじめ、一般的には後者を指す場合が多い。一方、本書が焦点を当てるのは前者で、日本の教育の課題を多面的に分析する内容は一読の価値がある。

 本書は、日本経済新聞が2021年10月から23年1月にかけて掲載した連載企画「教育岩盤」の第1部~4部の記事を基に、加筆・修正した内容で構成されている。学歴の重要性に加え、教育制度の構造的な問題や、技術系社員の知識不足にも言及しており、日本が置かれた状況をしっかり直視しなければならないと感じさせる。

 日本は「教育大国」と言われていたが、今は「危機的状況」にあるとの主張はうなずける。国際社会で必要な英語力の低さに加え、「先端研究やイノベーションの担い手」となる博士号取得者数の減少などが目立っているからだ。日本が伸び悩んでいる間に海外先進国の勢いは増しており、このままでは国際社会の中で取り残されてしまうかもしれない。「本物の高学歴者は日本には少ない」との本書の言葉は、重く受け止めたほうがいいだろう。(鰹)
 


『「低学歴国」ニッポン』
日本経済新聞社 編
日本経済新聞出版 刊 990円(税込)
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