BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『買い負ける日本』

2023/09/22 09:00

週刊BCN 2023年09月18日vol.1985掲載

変われない日本企業

 ここ数年の、半導体を中心としたモノ不足によるサプライチェーンの混乱は記憶に新しい。世界各国の企業が奔走する中で、実は日本企業が、半導体に限らず、多くの領域で海外企業に「買い負け」る事態が顕著となっているという。本書は調達・購買のコンサルティングを手掛ける著者が、日本企業が調達合戦に敗れている実情を示し、その要因と改善への提言をまとめている。

 買い負ける理由を端的に表現すれば、日本企業の構造そのものにある。ピラミッド型の多重下請けを基本とする生産体制、価値を生まない品質向上を求める開発・製造の思想、組織の安定を優先するがゆえにリスクをとってチャレンジできない企業文化──。これまで日本企業の強みとされていたことが反転し、負のらせんを描く。

 これらに対して著者は、現状打破に向けた提言を行っている。内容は調達面を中心とするものの、根幹は日本企業が変革すべき点として、長年にわたって指摘されている要素と重なる。しかし、今でも多くの企業は変革に二の足を踏み続けている。指摘が正しいことは理解できるが、具体的な道筋が見出せていないようにも映る。このまま進む先に明るい未来はあるのか。苦い読後感を覚えた。(無)
 


『買い負ける日本』
坂口孝則 著
幻冬社 刊 1034円(税込)
  • 1