BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『顔に取り憑かれた脳』

2024/01/19 09:00

週刊BCN 2024年01月15日vol.1998掲載

なぜ人は「美加工」に夢中になるのか

 どこかに出かけたとき、記念に写真を撮るようにしている。風景やその日食べたものと一緒に自分も写ることで、思い出をより詳細に残しておけるからだ。その際、自分の顔がよりきれいに見えるように「美加工」することがある。今やスマートフォンのアプリさえあれば、顔を小さくしたり目を大きくしたりと、自分の顔をワンタッチで理想に近づけられる。ついついやりすぎてしまい、結果的にかえって不自然な顔になってしまうこともよくある話だ。

 InstagramやXの投稿でも、美加工が施されている写真をよく目にする。その一方で、「無加工」をアピールする投稿も目にするようになった。美加工がごく一般的になったからこその現象と言えるだろう。

 なぜ、人々は美加工に熱中するのだろうか。本書によると、自分の顔を適度に美加工した写真を見ると、脳にある「側坐核」と呼ばれる、人をやる気や夢中の状態にさせる場所が強く活動するという。前向きな気持ちになるなどのいい効果もあるそうだが、著者は「時に過度な行動や依存を引き起こす」とも指摘する。

 言われてみれば、私自身、最近は誰に見せるわけでもないのに、写真に手を加えてしまうことがある。一度、美加工との向き合い方を考えるべきなのかもしれない。(留)
 


『顔に取り憑かれた脳』
中野珠実 著
講談社 刊 1078円(税込)
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