BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『自炊者になるための26週』

2024/02/23 09:00

週刊BCN 2024年02月19日vol.2003掲載

なぜ自炊は楽しいのか

 ほぼ毎日、面倒だなと感じながらも、台所に立っている。金銭的な問題で外食ばかりしていられないという事実もあるが、それ以上に自炊でなければ得られない喜びが確かにあると感じているからだ。ただ、その喜びとは何だろうかと自分でも不思議に思うことがある。

 著者は料理をしたくなる動機が「風味の魅力」にあると指摘する。風味とは「味と一体になったにおい」だ。食品を口に運んだとき、舌で感じる味わいとともに、口から鼻に抜ける香り、その複合要素を風味と呼ぶ。外食チェーンやコンビニエンスストアの製品のような、優れた味ではあるが、規格化された食では得られない風味の体験が自炊にはあるという。日々の自炊は季節や産地などによって個性の異なる素材の風味と向き合う行為であり、ささやかかもしれないが、私たちに感動をもたらしてくれる。この感動が「面倒くささ」を上回れば、無理なく自炊が続けられると説く。

 本書では風味がどう感動を生むのかという理論と、具体的に面倒を減らすための手法、簡潔なレシピといった技術がまとめられている。少しハードルが高い内容もあるが、全てを実践する必要もない。自炊に楽しみを見いだせない人にこそ、気軽に手に取ってほしい。(無)
 


『自炊者になるための26週』
三浦哲哉  著
朝日出版社 刊 2178円(税込)
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