パソコンの春モデルがほぼ出揃い、春商戦が本格的に立ち上がり始めた。この春モデルでは、ソニー、NECが「AV複合機」への傾注を深め、富士通はホームネットワーク対応を強化。ソニーでは、アップルの新型iMac(価格15万9800円から)の価格を意識した16万円の新機種「バイオW」を投入し、iMacの瞬発力を削ぐ施策も打ち出した。新入学・新社会人の需要が高まる春商戦では、AV複合機、ホームネットワーク、薄型ノートなど、若者や子供を狙った新商品が目白押しだ。

 今年の春モデルでは、ソニー、NECが、テレビやDVD、ミニコンポといったAV機能を盛り込んだ“AV複合パソコン”で、割安感と機能性に焦点を当てた提案に力を入れる。

 ソニーマーケティングの福島秀樹・VAIOマーケティング部統括部長は、「若者の意識調査によると、旅行やグルメ、コンサートなど生活を楽しむ消費を優先する傾向にある。パソコンや家電製品にお金を使いたいという人はほとんどいない。冬モデルよりCPUが何MHz速くなったなどの提案をしても売れるはずはない。それよりも、“デジカメやバイオ505系などのモバイルを旅行にもっていけば、より楽しい旅行を演出できる”、あるいは“グルメやコンサートの情報をインターネットで調べれば、より多くの情報が手に入る”などの提案をすべき」と話す。

 NECカスタマックスの越坂悦大・マーケティング本部商品企画部マネージャーは、「この春商戦は、ワイド液晶と組み合わせたAV複合機への移行がまた一歩進む。新社会人のひとり暮らし系AV複合機だけでなく、ビデオ編集に主眼を置いたマルチメディア系上級者の需要も無視できない。すべてがAV複合機に移行するわけではないが、やはり、1台でテレビからDVD、ミニコンポ、ビデオ録画(ハードディスク録画)まで対応できる複合機の魅力が威力を発揮しつつある」と分析する。

 富士通の小林義法・パーソナル販売推進統括部第二販売推進部部長は、「AV複合機の土俵だけで勝負すると、AV家電メーカーに一日の長がある。コンピュータメーカーの強みを活かし、ホームネットワークの切り口で提案する。中核になるホームサーバーの具体的な製品づくりはまだだが、全機種にLANポートをつけ、主要機種を無線LAN対応にするなど、ホームネットワークの下地づくりを進めた。02年中には、ホームサーバーを具現化する計画だ。『ミュージックサーバー』ではなく、富士通らしさを活かしたサーバーをつくる」と、意気込む。

 この春商戦は新型iMacという伏兵がいる。ソニーでは、ワイド液晶一体型のAV複合機「バイオW」をiMacと同価格帯の16万円で投入。DVDとCD-RW機能を搭載したiMacは18万9800円。つまり、iMacを“くぐる”値付けとなる。ソニーマーケティングの福島部長は、「平均的なバイオのパソコンとAVの比率が7対3であるとすれば、バイオWは7割がAVで3割がパソコン。大きさも学習机の奥に収まり、ワイド液晶でテレビやDVD鑑賞に十分対応する」と、iMacに流れそうな顧客の取り込みに必死だ。

 NECカスタマックスの越坂マネージャーも、新型iMacの動向に神経を尖らせる。「iMacは瞬発力があるので要注意。ただしiMac客層には、20万円以下でオフィスXPを搭載したバリュースターLシリーズでスペック的には対抗できる。あとは新型iMacのデザインがどこまで市場に評価されるかだ」と、冷静に構える。

 昨年の冬商戦では、NEC、富士通の売れ筋が続々と売り切れる事態が発生。この春商戦でも「市場の回復要因が見えない」(NEC)、「改善する要素は見あたらない」(富士通)と慎重な姿勢を崩さない。依然として数量不足の危惧は残るものの、AV複合機やホームネットワークを切り口にした春商戦の盛り上がりに期待が高まっている。