店頭流通

年末商戦はどう闘う? シマンテックv.s.トレンドマイクロ

2002/10/07 18:45

週刊BCN 2002年10月07日vol.960掲載

 コンシューマ向けセキュリティソフト販売の最盛期である年末商戦。この商戦期に向けた新製品を大手ベンダーが相次ぎ発表した。シマンテックは10月17日に、トレンドマイクロは11月1日にそれぞれセキュリティソフトの新バージョンを発売する。BCNランキングのセキュリティ分野を見ると、今年1-5月はトレンドマイクロがトップシェアの座を維持してきたものの、6月以降はシマンテックがその座を奪還、トップシェアを維持している。激しい争いを続ける2社だが、新バージョンの発表によって今後のシェア争いにどのような影響が出るのか。「年間トップシェアの獲得を狙う」と意気込む両社の動向を追った。(木村剛士●取材/文)

激戦模様のコンシューマ向けセキュリティ市場

■シマンテック、拡販施策に注力

 BCNランキングのなかで、セキュリティは最もシェア争いが激しい分野である。今年の動向を見ると、6月はシマンテック、トレンドマイクロ両社のシェアが拮抗していたものの、上半期の1月から5月までの5か月間はトレンドマイクロがトップを堅持。しかし、6月にシマンテックがトレンドマイクロを僅差で追い越し、その後7月、8月の2か月はトップシェアを維持、8月は今年に入って最大の17%以上の差をつけている。

 シマンテックの成田明彦社長は、「上半期つまづいた分を下半期で取り返し、年間トップシェアを必ず取る」と意気込みを見せる。

 同社が今回投入する主力製品「ノートン インターネット セキュリティ」は通常価格9800円だが、シマンテック製品の既存ユーザーおよび他社ウイルス対策ソフトを利用するユーザーには7800円で提供する。

 今年6月に実施した値下げキャンペーンが功を奏したのを受けて、販売に弾みをつけるために今回もキャンペーンを実施する。

 週ベースのランキングでも、キャンペーンを行った週からシマンテックがトップシェアを獲得するという結果が出ている。専用のキャンペーンサイトを開設し、期間中に対象商品を購入したユーザーに抽選でホームシアターセットなどを提供する。

 コンシューマ営業事業部・斎藤秀明事業部長は、「専用キャンペーンサイトは新しい試み。セキュリティに関する情報も提供し、ユーザーとのコミュニケーションの場にしたい。これによって店頭に来てもらえる機会を作っていく」と語る。合計で初年度の出荷台数200万本を見込む。

■ウイルスバスターは名称変更

 これに対し、トレンドマイクロのスティーブ・チャン社長は、「日本でのウイルスバスターのブランドは、欧米市場にない大きな武器。新製品の投入で巻き返す」とがっぷり四つの体勢だ。

 製品としては、「ウイルスバスター2003 リアルセキュリティ」4種類をラインアップ。価格は標準版で8500円。従来通り前バージョンからのアップデートは無料で行えるが、大きな戦略として、パッケージ名を変更するという大胆な対策をとった。

 従来の「ウイルスバスター」の末尾に「リアルセキュリティ」を追加。パッケージデザインも変更した。単なるウイルス対策ソフトではなく、トータルセキュリティソフトというイメージづくりを前面に押し出す。この新戦略で合計150万本の出荷を目指す。

 マーケティング本部リテールマーケティング課・小太刀和江課長代理は、「『ウイルスバスター』の名前は大きなブランドだが、その反面単なるウイルス対策ソフトと思われがち。名称変更で総合的なセキュリティソフトというイメージを定着させる」と話す。

 両社ともトータルセキュリティソフトのイメージ定着と、初心者ユーザーの掘り起こしがカギになると主張する。セキュリティに対するユーザーの意識は確かに高まっている。しかし、被害を受けなければ導入しないという意識が高いのも現状だと認識する。その意識をいかに掘り起こせるかに年間王者の座はかかっている。
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