秋葉原は今

<秋葉原は今>25.最終回 IT拠点として第2ステージへ

2006/05/22 16:51

週刊BCN 2006年05月22日vol.1138掲載

 JR秋葉原駅前の超高層ビル群である「秋葉原クロスフィールド」の本格稼働で、ひとまず都市再開発による街の集客増に向けた取り組みが一段落した。

 昨年は、「つくばエクスプレス」開通による遠方からの来訪者増、ヨドバシカメラの秋葉原進出によるパソコンユーザー増などの恩恵に浴した。実際、週末には高齢者や女性など、従来はあまり見られなかった層の来訪者が増えている。電気街でも、各ショップが新規顧客層の獲得を狙ったリニューアルを図り、価格競争だけではない付加価値サービスの強化を追求するようになった。この2年間で秋葉原は急速に変貌を遂げた。

 団体同士の連携も進みつつある。秋葉原電気街振興会が「秋葉原UDXパーキング」運営会社の駐車場総合研究所と提携。1店あたりの購入金額が1万円以上となれば、2時間無料のUDX駐車サービス券を発行するようになった。

 また、秋葉原関連団体による駅前広場で集客増を狙ったイベントや、IT関連企業が秋葉原ダイビルの活用でセミナーを実施する動きも活発化している。

 都市再開発により、街に新しい文化が次々と入ってきたわけだが、昔ながらの文化も廃れていない。駅前には超高層ビルだけでなく、トランジスタラジオの部品店などが軒を連ねている。「秋葉原は、古いものがなくならないまま、新しいものが積み重なっていく。だから、ほかの街にはない独特の雰囲気がある」と、電気街ショップの関係者は強調する。都市再開発を進めてきた石原慎太郎・東京都知事も、「秋葉原は、米国のブロードウェイのような華やかさと、ノスタルジックな雰囲気が混在している。このような街は世界に類がない。加えて、海外から多くの観光客が訪れるという環境もある。街の雰囲気と集客の吸引力を生かせば、必ず世界に通用する“モノづくり”を確立できる」と評価している。

 今後は、駅前周辺でシステム開発の富士ソフトABCが大規模拠点を構えるなど、IT関連の就業人口がますます増えるといわれている。連携という面では、秋葉原ダイビルの産学連携機能で生まれたハードやソフトを電気街ショップで販売するサイクル形成の可能性も秘めている。実現すれば、IT関連分野のビジネスが一段と活性化することになるだろう。

 電気街を中心に街の主力産業であるエレクトロニクス分野のビジネスが復活しつつある。これからは、“世界屈指のIT拠点”を目指す街として第2ステージへと進むことになる。(佐相彰彦)
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