中国の家電量販店、蘇寧電器を新たな大株主に招き入れることを決めたラオックス。前社長の山下巖顧問は、「免税品販売事業とのシナジーを発揮しやすいため」と蘇寧電器を選んだ理由を説明した。中国企業との資本提携という日本の家電業界にとって前代未聞の策を打った陰にはさまざまな想いがあったに違いない。前号に引き続き、今回の資本提携の裏側、胸のうちを陣頭指揮を執った本人に尋ねた。(聞き手=木村剛士)
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山下巖顧問
──中国企業が大株主になることに反対意見が多かったのでは?
山下 もちろん社内外に反対の声がありました。国境を越えた資本提携は初めてでしたし、業種を問わず中国企業との資本提携話は浮かんでは消えるのが常ですから、「本当にできるのか?」と。10人中、8~9人は成功しないと思っていたことでしょう。
確かに、実際の交渉現場ではいくつもの壁があった。でも、成し遂げたのは事実です。自慢話に聞こえるかもしれませんが、日本の家電業界にとっては、海外企業との資本提携という非常にエポックメーキングな展開だったと思っています。
──従業員は不安を感じているのではないでしょうか。
山下 確かに、戸惑いはあるでしょう。まだ意識が100%切り替わっていないと思います。今後のラオックスは免税販売事業が一層強くなり、扱う製品も雑貨など家電以外の商品が増えていくことになります。従業員のほとんどは、家電の販売畑で育ってきた人ばかりですから、戸惑うのは無理もないですし、一抹の不安も感じていると思います。
ただ、会社が大きく変わり、グローバル企業へと変貌するわけですから、一日も早く次の展開に慣れてほしいと思っています。全従業員を集めた説明会でも、羅(怡文)社長がそう呼びかけました。
──この資本提携を機にラオックスを離れた従業員は?
山下 郊外店の閉鎖などで、やむなく去った人はいますが、この件で退職した人はいません。
──資本提携後も社長を務めるつもりはなかったのですか。
山下 (きっぱりと)それはない。今回交わした契約書では、私は社長を離れることになっていました。そういう契約上のこととは別に、私自身、社長を続ける意思はなかった。新しい体制でスピーディに成長するには、中国コネクションをいかに有効活用するかが重要だからです。細かなことをいえば、まず中国語に堪能でなければならないし、中国の市場、文化にも精通している必要がある。となると、私よりも羅さんのほうがふさわしい。羅さんは日本語も得意で、日本の市場も熟知していますから、まさに適任だと思っています。
──ご自身の今後の道として、山下さんは何に取り組んでいこうと考えていますか。
山下 個人的な想いになりますが、この2年間、多くのメーカーに本当にお世話になりました。以前よりも圧倒的に当社の販売量が減ったにもかかわらず、「山下さんのお願いなら何とかしよう」と言ってくれて、条件を変更することなく従来通りに取引してくれたメーカーがたくさんあります。私はそんな力を貸していただいた方々に恩返しをしたい。例えば、日本のメーカーが中国市場に進出しやすくなるようにサポートするとか。具体的な話はこれからですが、中国コネクションを生かして、日本メーカーのビジネス拡大を手助けできればと思っています。