「逆張り」の戦い方
起業した当初、クラウド会計ソフトが今後の主流になるとにらんでいた。必ず成長する事業になると思ったが、多額の資金や大きな戦略が求められる点で「自分の経営スタイルに向いていない」気がした。メガプレーヤーの出現により激変する市場において、あえてニッチな部分に目を向け、そこでナンバーワンになる。それが自分らしい戦い方だと感じた。
クラウド会計が普及しても、それを使いこなせず、紙に頼らざるを得ない現場が多数を占めるのではないか。時代の趨勢から見れば「逆張り」の予想でもある。「逆張りはすごい怖い。大外れになることもあるから」。けれど、踏み出した道に間違いはなかった。
ヒーローにはなれない
「ヒーローにはなれない」。ずっとそう思っていた。企業でもトップではなく、参謀役としてリーダーを盛り立てる役目のほうが本当は似合う。それでも経営者となったのは「世の中の課題を解決する『仕組み』をつくりたい」という強い思いがあったからだ。会社員として経営企画に携わっていたころ、経営の仕組みが整っている会社が競争に勝つことを痛感した。「自分ではどんな仕組みがつくれるだろう」。少年のような好奇心が起業を促した。
ロマンは満たされていない
企業活動を通じて、顧客や社員の人生の可能性を広げていくことが自分の役目だと考える。「僕自身もいろいろやってみて、楽しいことがいっぱい起きた。自分が感じたことを提供したい。チャンスを提供するのが、経営者としての僕の仕事」
自分の可能性も、もっと広げたい。「海外で事業を起こし、現地で売り上げを立てることがしたくて起業したけど、全然できてない」。国内での事業を発展させていくのは当然だが「僕のロマンが満たされていない」。わくわくすることにチャレンジしていたい。やはりマインドは経営者ではなく、プレーヤーにあるようだ。
プロフィール
菅藤達也
1978年生まれ。ゲーム業界でプロジェクトマネジメントや海外開発拠点設立を手掛ける。2006年に現マクロミルに入社し、M&AやJV設立を担当。12年にクラビスを設立。マネーフォワード執行役員CSOを兼務。
会社紹介
海外オペレーターによる手作業と、AI-OCRを活用した紙証憑の自動記帳サービス「STREAMED」を提供。2017年11月にマネーフォワードグループの傘下に。