たった一人から250人超
資本金10万円を手に社長兼エンジニアがたった一人で起こした会社は、8年で250人を超えるエンジニアを抱え、SESとしては大規模と呼べるほどに。自身は「先々のことを描ける人間でもないし、必要なことをがむしゃらにやっただけ」と振り返るが、エンジニアが働きやすい環境づくりにはこだわりがある。
案件単価の7割をエンジニアに還元するなどの待遇面はもちろん、重視するのは「案件を受けるかどうかを決めるのはエンジニア」であること。営業が案件を獲得しても、エンジニアがやりたがらない仕事は断る。「エンジニアがやりたいことをやっているのでパフォーマンスが高い」。エンジニアを大切にする姿勢が、顧客の満足にもつながっている。
エンジニアが「かわいそう」
好成績を残していたSIの営業から技術職に転向した動機は、単に「もっと売るため」に知識を得たかったから。しかし、そこで目にしたエンジニアのキャリアパスのあり方にやるせなさを覚えた。ある人は最新の技術に触れられるプロジェクトに回され、別の人は単純作業の仕事をあてられる。会社のさじ加減一つで、得られるスキルが大きく変わり、それがキャリアにも影響する。
「会社の業務の割り振りによって、エンジニアのスキルに差が生まれ、人事評価も変わってくる。全てが会社の都合で、人生が決められる。エンジニアがかわいそうだった」
その感情が、起業へと導くことになる。
働き方の選択肢を増やしたい
近い目標として上場を掲げる。上場によって資金調達を図り、さらに会社を発展させ、エンジニアの働き方の選択肢を増やすことが願いだ。地方でも海外でも自由に働けるようにしたい。
「海外からの仕事を引き受けて、それがきっかけに永住権が持てるような環境が作れればいい」。全てはエンジニアのために。できることはまだまだある。
プロフィール
伊藤貞治
1978年生まれ。大手SI企業に営業職で入社後、ベンチャー企業にヘッドハンティングで転職。28歳で技術職を志し、スキルを磨いて1年で中間管理職に就任。プロジェクトマネージャーやコンサルティング職を歴任した。2014年7月にアイ・ディ・エイチを創業。
会社紹介
システムコンサルタントやマネジメント支援、プロジェクト支援、運用支援などの分野で、エンジニアをさまざまな企業に派遣するシステムエンジニアリングサービス(SES)を展開。20年7月にはテレワーク勤怠管理・生産性分析システム「RemoLabo(リモラボ)」の提供を開始。