客が逃げ出し、競争に勝てない
企業が社内で使う業務アプリは、手引書を読みながら、同僚やヘルプデスク担当者に聞いて、ようやく操作できる難解なケースがある。この感覚のままで顧客向けのアプリをつくると、「あまりの使い勝手の悪さに顧客が逃げだし、競争に勝てない」と話す。
スマホ普及がビジネスの転機に
米国留学中や外資系SIerに勤めた時、「従業員向けのアプリでも使い勝手がよく、分かりやすいユーザーインターフェース(UI)や、優れたユーザー体験(UX)を提供することで、従業員エンゲージメントや生産性が高まる」ことを学んだ。
このことがきっかけで、2000年に起業したビービットでは、一貫してUI/UXに特化したコンサルティングサービスを手がけている。しかし、会社を立ち上げた当初は、なかなか顧客に受け入れられなかった。
潮目が変わったのは、スマートフォンが本格的に普及した10年頃だ。スマホを持つ大多数の消費者にデジタルマーケティングを展開する必要性から企業のUI/UX向上の需要が急拡大した。
SaaS開発で“仕組み化”推進
17年には、UI/UXの継続的な改善を支えるSaaS「USERGRAM(ユーザグラム)」を開発。ユーザー企業の担当者が異動しても、“仕組み化”によって品質を維持向上できる。ビービットにとっては、利用料金などを安定的に得られるリカーリング型の売上比率4割への拡大に大いに役立った。
UI/UX重視のビジネスがいち早く立ち上がった中国、台湾市場にも進出。今年1月には、台湾のデジタルマーケティング会社の子会社化を発表している。「まずはアジア近隣市場へと進出を加速させ、最終的にはUI/UXビジネスの発祥の地である北米市場に上陸したい」と夢を語る。
プロフィール
遠藤直紀
1974年、鳥取県生まれ。96年、横浜国立大学経営学部卒業。米国留学、ソフト開発会社、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て、00年、ビービットを設立。代表取締役に就任。
会社紹介
2000年設立。グループ従業員数約190人。デジタル時代のUI/UX向上に特化したコンサルティング事業を手がける。同社執行役員CCO兼東アジア営業責任者の藤井保文氏らの共著『アフターデジタル』(2019年、日経BP)は、ビジネス書としては異例のシリーズ累計21万部のヒット作となった。