これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「フツパー・大西洋CEO」を取材しました。
イスラエルで起業のヒントを得る
盛田昭夫やスティーブ・ジョブズ、藤田晋の各氏などの著名な起業家の本が好きな父親に影響され、「何となく手にとって読むうちに、中高生の頃からぼんやりと“起業”を意識するようになった」。
脱サラ後は、米国に次いで起業家が集まるとされるイスラエルに赴きチャンスを探った。海外から日本を客観視することで「日本の製造業は品質へのこだわりが強く、中小企業が多い」ことをより明確に認識できた。
「はやい・やすい・巧い」がモットー
品質を重視する傾向が強いのであれば、そのための予算も確保しやすいはず。2020年4月に立ち上げたフツパーの主力商材は、発展著しいAIと組み合わせて、生産ラインに設置する「外観検査AI」とした。
外観検査装置の設置やAI学習にかかるメニューを標準化してコストを抑えるとともに、中小企業の顧客を意識して「はやい・やすい・巧い」をモットーとした。狙いどおり中小製造業に重宝され、ユーザー数はうなぎ上りに増えた。
社名の「フツパー」はイスラエルの公用語で「大胆」「しつこい」「厚かましい」などを表す言葉で、果敢に攻める起業家マインドを重視する経営方針と合致させた。
父が好んだ起業家の背中を追う
スタートアップ企業を支援する施設が安価で利用できるようになったことに加え、コロナ禍のリモートワークの普及により、首都圏の投資家とビデオ会議でつながれるようになったことも事業成長の追い風になっている。
8月には、投資会社などから累計5億4000万円の資金の調達に成功。従業員数を向こう3年で3倍の100人に増やすとともに、全国展開も進める。「将来的には、父親の本で読んだ起業家たちのように、世界市場に進出していく」と意欲を示す。
プロフィール
大西 洋
1994年、兵庫県生まれ。2017年、広島大学工学部卒業。同年、日東電工入社。イスラエルで起業を試みるも断念。工場向けAI/IoTベンチャーの事業開発グループリーダーを経て、20年4月、フツパーを創業。
会社紹介
主力商材は中小製造業向け外観検査AIシステム「メキキバイト」。食品や金属加工、日用雑貨などのメーカーが主な顧客層。従業員数は約30人。本社所在地は大阪府。NTT西日本のオープンイノベーション施設QUINTBRIDGE会員。