これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「ハイブリッドテクノロジーズ・チャン・バン・ミン社長」を取材しました。
日本とベトナムの架け橋に
小学校に上がって間もなく両親の仕事の関係で来日して以来、日本とベトナムで人生の半分ずつを過ごしてきた。社会人になってからは日本語力を生かし、ベトナムで日系企業や日本と取引のあるIT会社などで勤務。「ベトナムと日本の架け橋になっている」との充足感があった。
ある日、旅行事業などを手がけているエアトリの創業者に出会ったことで、人生の方向性が大きく変わる。彼はチャン氏の商才を見込んで「自分で事業を起こせば、また違う景色が見えてくる」と、起業を勧めてきた。
夜遅くまで夢を語り合う
物心ついたときから日本とベトナムの架け橋になることを夢見ていた。最初こそ懐疑的だったものの、何度も会い、夜遅くまで夢を語り合ううちに、「自分も彼と同じ視点に立って、今はまだ見えない景色を見たい」と意欲がわいた。
2016年、ベトナムのオフショア開発を主軸とした会社を日本で立ち上げた。エアトリの助力を得られたことに加え、ベトナムでのオフショア開発が急速に伸びていたことが追い風となり、事業は急速に伸びた。
社名に創業の思いを込める
エアトリが手がけるIT事業の一部を譲り受けたのをきっかけに、19年に社名をハイブリッドテクノロジーズに変えた。ハイブリッドには「ベトナムと日本の架け橋になる」という創業の思いを込めた。
21年には東証マザーズ(現グロース)市場に株式上場を果たし、調達した資金で日本のスタートアップ企業など10社余りに投資を行う余力もできた。企業理念に掲げるキーワードは「New View With You(あなたと新しい景色を見る)」。今度は日本とベトナムのさまざまな会社の経営者や従業員とさらなる高みを目指し、「今はまだ見えない景色をともに見たい」と決意を新たにする。
プロフィール
チャン・バン・ミン
1986年、ベトナム・ドンナイ省生まれ。ダナン育ち。ベトナム国家大学大学院国際学部(修士課程)を修了。日系製造業などの勤務を経て、2014年、ベトナムのIT大手FPTインフォメーションシステム入社。16年、日本でEVA(現ハイブリッドテクノロジーズ)を創業。代表取締役社長に就任。21年、東証マザーズ市場(現グロース)に株式上場。
会社紹介
ハイブリッドテクノロジーズは、ベトナムでのオフショアソフト開発を主軸とするSIer。日越合同でチームを組み、準委任契約によるアジャイル開発を強みとする。23年9月期の連結売上高は前期比33.7%増の32億円、営業利益は同39.0%増の4億円を見込む。