これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「HataLuck and Person・染谷剛史CEO」を取材しました。
サービス立国の日本を元気に
コンサルタントとして働いていたとき、ある企業の工場が海外へ移転し、その跡地がショッピングセンターになるのを見た。工場に勤めていた人の中には、新しいショッピングセンターで接客に従事する人もいた。「日本は製造業が世の中を引っ張っていると思っていたが、サービス立国なんだ」と考え、それ以来、「日本を元気にするために、労働人口の過半数が従事するサービス業をなんとかしたい」という思いを抱く。
学生やシニア世代など、多様な属性の従業員が店舗で一体となって活躍できる環境を、テクノロジーの力でつくりたい。40歳の節目に、勤めていたコンサルティング会社を辞め、HataLuck and Personを設立した。
顧客の信頼を守る
事業が軌道に乗り始めたころ、限られた資金をプロダクトのメンテナンスに充てるか、それとも新機能の開発に投資するかの岐路に立たされた。性能を改善しなければ既存顧客が離れてしまう。しかし、新機能をリリースしなければ新規顧客獲得の見込みが立たない。
難しい経営判断だったが、性能改善を選んだ。「プロダクトが未熟な段階から付き合ってくれた顧客の信頼を失うわけにはいかない。応援されなくなったプロダクトが新しい顧客を獲得するのは難しい」。自社の提供する価値が確実に届くよう、プロダクトを磨いたことが現在につながった。
シフトワーカーの生産性高める
自社が提供する「はたLuck」で大事にしているコンセプトが、シフトワーカーの生産性の向上だ。「店舗改革には、レジを無人化するというやり方もあるが、ただ人間を機械に置き換えても、生産性を上げたとは言えない」。給料が上がらない日本では、テクノロジーを「人材の削減ではなく、潜在能力を引き出すために活用するべきだ」。
将来は、はたLuckに登録した従業員が自分の職歴をPRしたり、業種・業務ごとに標準化された研修を受けたりできるプラットフォームに育てていくのが目標。シフトワーカーが適切なスキルを身に付け、活躍できる社会を目指す。
プロフィール
染谷剛史
1976年生まれ。98年にリクルートグループに入社し、中途・アルバイト・パート領域の求人広告営業、Web・モバイル系新商品開発に従事。その後、組織・人事コンサルティングのリンクアンドモチベーションを経て、2017年にナレッジ・マーチャントワークス(現HataLuck and Person)を設立。
会社紹介
コミュニケーション・教育・シフト作成・評価といった機能を備える店舗マネジメントツール「はたLuck」の開発・販売のほか、店舗を営む企業にコンサルティングサービスを提供する。