これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「pluszero・森遼太社長COO」を取材しました。
AI論文が倍々で増え始める
物心ついたときから手当たり次第に文字を読むことが好きだった。自宅や図書館にある本をランダムに読んだり、本が手元にないときは台所にある調味料のラベルの字面を追ったりして、新しい気づきを得ることに喜びを感じていた。
大学院に進学したあとも、日々発表される論文を読みふけった。いつものようにジャンルを問わず読んでいるとき、ふとAI関連の論文が増えていることに気づく。当時のAI関連の報告論文はせいぜい月100報程度。生物学や医学などメジャーな学問が月数千報に達するのに比べれば微微たる数だったが、深層学習がメジャーになるタイミングから倍々に増えていった。
すぐにでも社会実装が可能
ちょうどその頃、ある企業で最新の数理モデルを使ったオークションの価格予測のアルゴリズム開発を手伝った。最適価格を割り出すことで、売買される取引量が劇的に増えたのを目の当たりにする。「研究室での研究テーマが社会実装されるのは10年くらい先だろう」と漠然を思っていたが、やり方次第では今すぐにでもビジネスになることを知った。
「論文数が急増しているAIを使って何か社会に役立つ研究をしたい」と考えるに至るものの、すでにAI関連の論文数は個人で読める範囲を軽く超えるほど増えていた。組織的に論文を読み解く体制づくりの資金を稼ぐ目的も兼ねて、pluszeroの立ち上げに踏み切った。
知識を貪欲に取り込む楽しさ
ChatGPTなど生成系AIが脚光を浴びるが、ユーザー企業のビジネスに落とし込むにはいま一歩何かが足りない。業務に柔軟に対応できるよう、優れた頭脳を集めて「日本の産業が出遅れないよう臨機応変に社会に実装していく」と意気込む。
AIの社会実装は未知の部分が多く、常に新しい気づきによって前に進める。「本業のAIの知識はもちろんのこと、あらゆる分野の知識を貪欲に取り込んでいくことが楽しくて仕方ない」と笑顔で話す。
プロフィール
森 遼太
1988年、静岡県生まれ、愛知県育ち。2016年、東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士課程修了。博士(科学)。18年、pluszeroを設立。
会社紹介
AIソリューションなどの開発・提供や受託、コンサルティングを手掛ける。2023年10月期の売上高は前期比25.1%増の9億円、営業利益は25.2%増の1億5900万円の見込み。