これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「ゼロボード・渡慶次道隆代表取締役」を取材しました。
環境への知見を生かす
子どもの頃、家から出るごみを徹底的に分別し、本当に生ごみが分解されるのか確かめたくて自分でコンポスト(発酵腐熟させた肥料)を作っていた。環境やエネルギーへの関心から大学で建築熱環境を学び、仕事では金融を皮切りに環境コンサルなどを経験した。
会社員時代に「GHG(温室効果ガス)排出権取引プラットフォーム」を開発しようと、取引先にニーズをヒアリングしたところ「そもそも自社のGHG排出量を把握できていない」という声が多かった。大企業は脱炭素への取り組みを金融市場に開示しなくてはならないという背景もあり、社内事業として排出量の可視化プラットフォーム開発に着手。「自分の知見を生かして社会貢献したい」との思いから、より多くの人にソリューションを届ける目的で起業した。
人と違うやり方を恐れない
ゼロから新しいソリューションを生み出すのは容易ではない。「人と同じことをやっていても勝てない」という信念で、ビジネスモデルを作ってきた。その根底にあるのは、脱炭素への取り組みが世の中に必要とされているという思いだ。
脱炭素社会の実現に必要なものを、いかに多くの企業に届くかたちで作り上げるか。「人と違うやり方を恐れない」が信条。SaaSの排出量可視化プラットフォームを入り口として、パートナー企業が提供する脱炭素ソリューションをユーザー企業に紹介。フラットな立ち位置で銀行や自治体とも連携し、企業の規模を問わず脱炭素化をサポートしている。
環境貢献が評価される社会を
世界的な脱炭素の動きは、欧州が主導している。日本企業が誠実に取り組みを進めても、その実態を的確に開示しないと評価されないと感じる。「環境に対する貢献で、正当に努力した企業がきちんと評価される社会にしていきたい」
財務諸表に出る利益だけではなく、環境に対する貢献が企業価値として評価を受けるためには、フェアな物差しを作っていくことが必要だ。タイに構えた現地法人を足掛かりに、アジアでの脱炭素を主導することを目指す。見据えるのは、グローバルで脱炭素のルールメークに参画できるよう、日本企業のプレゼンスが高まる未来だ。
プロフィール
渡慶次道隆
1982年神奈川県出身。東京大学工学部卒業後2006年、JPMorganに入社し債券・デリバティブ事業に従事。三井物産を経て18年、A.L.I.Technologiesに入社し、電力・重電系企業向けのシステム開発、コンサルを担当。21年、企業向けのGHG排出量算定・可視化クラウドサービスを開発し、ゼロボードを設立。
会社紹介
GHG排出量算定・可視化クラウドサービス「zeroboard(ゼロボード)」を提供。排出量が多い製造業をメインターゲットとし、建設、物流業界向けに業界特有の機能を付与したソリューションを展開している。