これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「ソフツー・鍾 勝雄代表取締役」を取材しました。
働き方の違いをヒントに
来日後にITエンジニアとしてある会社に在籍していた際、女性社員が「結婚して主婦になるから」という理由で仕事を辞めたことが衝撃的だった。中国では結婚や出産を経ても女性が働き続けるのは当たり前。優秀な人材にもかかわらず、仕事を辞めてしまうのはもったいないと感じた。
起業するに至ったのは、「同じような女性が、家にいながらにして仕事ができるサービスがあれば」との思いからだ。働くことに対する文化の違いがビジネスチャンスへとつながった。
スピード感がかぎになる
2023年2月、AIを活用した電話の自動取り次ぎサービスを正式にリリースした。少し前まではAIが普及する未来はまだ遠いと思われていたが、「ChatGPT」の登場でAIの活用は一気に身近なものとなった。AIを利用する上で重要なのは「人は人にしかできない仕事をし、人でなくてもできる仕事はAIに任せる」こと。人口減少による労働力不足が危惧される中、AIを通じて豊かな生活を維持することが目標の一つだ。
「実はAIの普及や、人手不足といった世間の動きには多くの人が気づいている」。ただ、気が付いていても「目の前の仕事しかせず、行動を起こせていないことが多い」。だからこそ、自身はできることがあればとにかく早く取り組むようにしている。早い段階で世の中に出し、フィードバックを基に改良を重ね、実用性を高めていくことを重視している。
文化のギャップを乗り越えて
日本で事業を展開する中で、文化のギャップが立ちふさがった。会社を強くするため、日本の伝統的な経営哲学を学んで会社に取り入れたが、結果は大失敗。「素晴らしい考え方ではあるものの、自分に根付いていないものを外部から持ち込んでもうまくいかない」。これをきっかけに、事業の方向性やアイデア出しに全員で取り組むようにしたほか、さまざまな国から来た社員がお互いの文化を理解するために異文化交流会を開催するなど、「よりグローバルなやり方に変えることにした」。
「当社の強みはいろいろな目線から、さまざまなアイデアが出てくるところだ」。例えば伝統的な日本の会社ではなかなか出てこない発想もあれば、海外と日本のそれぞれのよいところが合わさったアイデアが出てくることもある。さまざまな国の人が集まったからこその強みを生かしていく。
プロフィール
鍾 勝雄
1978年、中国・福建省生まれ。大学卒業後、米国通信会社の中国支社に入社し、SE、CTOを経て5年にわたりIP電話システム開発に携わる。2006年にITエンジニアとして来日後、08年にソフツーを設立。
会社紹介
2009年から、規模を問わず幅広く対応するクラウド型コールセンターシステム「BlueBean(ブルービーン)」を開発、販売している。23年には、AI電話自動応答・取り次ぎサービス「ミライAI」の提供を正式に開始した。