これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「GOOD VIBES ONLY・野田貴司CEO」を取材しました。
在庫を持たないビジネス
前職で、自社で立ち上げたアパレルブランドを売却することになった。好調な事業だと自負していたが、売却先からは、保有していたブランドの資産価格から4億円分の割引を求められた。「アパレルの在庫には価値がないと評価された」からだ。
アパレル業界では、在庫がなければ売り上げをつくることはできない。しかし、過剰に生産したり、在庫を多く持ちすぎたりすることは、衣類の破棄という問題につながる。ジレンマを解消するために、現在の会社では「在庫を持たないビジネスを実現する」を目標にする。
業界の慣習を変える
提供中のアパレル向けDXツール「Prock」は、業界内で一定の注目を集めている。提案を断られたことはなく、提案先の経営層の多くは導入について乗り気だという。
しかし、商談を進める中で、現場からは歓迎されないことがある。服のサンプルやパターンをデジタルデータ化することで「自分たちの仕事を奪われることにつながるのではないかと脅威に思われる」
実際は、既存の業務を効率化しているのであって、誰かの仕事を奪っているわけではない。それをきちんと理解してもらうもらうためには「啓発していくしかない」と考えている。業界の慣習を変えるのは大変だが、「どのようにして効率化するのかというところから、現場の人ともとことん話し合っていく」
社員が意思決定に関われるように
創業初期、トップダウンで会社を経営していたことがあった。しかし、判断に柔軟さが足りず、組織が育たない上に、離職者も出てしまった。だからこそ、今は全員が意思決定に関われる環境づくりに注力している。「社員一人一人が、会社をどうしていきたいかについて考えを持つ。最終的に意思決定を下すのは自分ではあるが、判断の過程で、社員の意思を積極的に反映させるようにしている」
「会社は、みんなで集まってやりたいことを実現するための箱だ」と考える。やりたいことを中心に据えて、チーム全員で取り組むために、「GOOD VIBES」、つまり「いいノリ」が集まる会社にしていきたい。
プロフィール
野田貴司
1992年、福岡県生まれ。大学を中退し、上京。3minute Inc.(現グリーライフスタイル)に入社し、ファッションブランド「eimy istoire」の立ち上げに貢献。2017年に同社を退社し、GOOD VIBES ONLYの立ち上げに参画。19年から現職。
会社紹介
2018年に設立。22年からアパレル向けDXツール「Prock」を提供。MD(マーチャンダイジング)システムから、デジタル3Dサンプルの作成、AIによる需要予測ツールまで一気通貫で提供しており、業務効率化と衣類廃棄の課題にワンストップで取り組む。