これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「any・吉田和史代表取締役CEO/CKO」を取材しました。
チームが一つのことに集中する難しさ
3歳からサッカーを始め、中学校で地元である九州大会の準優勝まで登り詰めた。高校では県ベスト4位、大学では個々人の技量は高かったもののチームにまとまりがなく上位入賞はできなかった。チームの成果を最大化する「チームシップの大切さを身をもって知った」と振り返る。
中高のときはサッカーボールを蹴ることに集中、それ以外は他人事だったが、大学になると学費を稼ぐためのアルバイトや就職活動で、必ずしもみんながサッカーやチームシップに集中できるわけではなかった。社会人でも同様のことが言えるのではないか。
多様化する職場でこそ役立つ
職場を見渡すと、猛烈に働く人もいれば、子育てや介護に忙しい人もいる。社歴が長い人やそうでない人などさまざま。ここでチームシップを発揮するには、日々の会話だけでなく、各々が持っている知見を共有することが有効だと考え、ナレッジ管理のビジネスを2018年に立ち上げた。
ナレッジ管理でキモとなるのが心理的安全性の担保。「誰か知ってますか」と問いかけても誰からも反応がなかったり、「お前そんなことも知らないのか」と不快感を抱いて返答されたりしては、誰も何も言えなくなってしまう。開発に際しては匿名投稿や気心の知れた少人数のチーム内での知見の共有など、心理的安全性を高めるさまざまな機能を盛り込んだ。
他事業売却で背水の陣
先行製品が数多くあるナレッジ管理市場だが、コロナ禍のリモートワークで需要が急増。即時性重視のチャットやスケジュール管理中心のグループウェアでは共有しづらい知見をオンラインで伝承できる点が評価され、ユーザー数は5万5000人余りに増えた。
「日本企業が競争力を維持するには知見の継承が欠かせない」と考え、それまで手掛けていたウェブ雑誌や漫画アプリなどの事業を売却した。「ナレッジ管理に経営資源を集中する」と、背水の陣で臨む。
プロフィール
吉田和史
1990年、福岡市生まれ。2012年、西南学院大学卒業後にアイモバイル、14年にグッディア入社。16年、any(エニィ)を設立。
会社紹介
ナレッジ管理「Qast(キャスト)」を展開する。従業員数は24人で、今後数年で3倍に増強する。Qastのユーザー数は直近の10倍近い50万人余りに増やす目標を掲げる。