これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「アルプ・伊藤浩樹代表取締役CEO」を取材しました。
苦い経験から起業へ
優れた基盤はビジネスの自由度を上げ、成長に向けた一助になる。その意味で、自社の取り組みは「挑戦するに足る課題に向き合っている」と力を込める。
前職でクリエイター向けのSNSを運営する会社の社長を務め、月額課金のビジネスを経験した。その際に苦労したのは決済基盤の構築。「大きなリソースが割かれ、やりたいことをやり切れなかった」と振り返る。
多くの企業がサブスクリプションビジネスを展開するようになった。苦い思いをした当時の経験は、各企業が抱える悩みに通じる部分があると判断。会社を立ち上げ、サブスクリプションビジネスを支える側に回った。
顧客の事業を支える
サブスクリプションビジネスは「売ってから始まる」のが特徴で、「顧客とのよき関係の積み重ねが収益の最大化に直結する」とみている。
その上で「愚直に価値提供を続ければ、その間は顧客がついてくる。真面目に挑めるのが、サブスクリプションビジネスの面白いところだ」と語る。
ただ、顧客の満足度を向上させるためには、サービスの開発やサポートなどでより素早い対応が必要になる。製品設計や契約、請求、決済などを一元管理し、やりたいことに注力できるようにする自社のSaaS「Scalebase」は、顧客の事業を支える基盤として役に立つと信じる。
障害を取り除く
「商売の原点は困っている人を助けること。顧客の課題に向き合うことは、費用対効果が高い顧客対応とイコールではなく、手間がかかる」。しかし、顧客との関係を理解し、要求に的確に応えなければ、そこで顧客との関係は終わり、収益も止まってしまう。
だからこそ、顧客とのやり取りに全力を尽くすことが重要で、経営者として「業務上でぶつかる障害を取り除くことが自身の役割」だと捉える。
「あらゆる企業に、フルスイングを」が会社のミッション。各企業の前に立ちはだかる壁をなくし、社員が新しい挑戦に集中できる社会の実現を目指して、これからも力を振るう。
プロフィール
伊藤浩樹
モルガンスタンレー、ボストンコンサルティンググループを経て、2013年にピクシブに入社。新規事業開発、開発組織のマネジメントを経て、17年に代表取締役社長兼CEOに就任。18年にアルプを設立。
会社紹介
サブスクリプションビジネスにおける製品設計や契約管理、請求管理、指標分析、仕訳作成などを一元管理できるSaaS「Scalebase」を開発・提供する。