これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Ollo・川合健斗CEO」を取材しました。
プロダクトをつくる楽しさ
小学6年生の時、お年玉を握りしめて初売りの列に並び、一番安いパソコンを買った。プログラミングにのめり込み、Flash動画を投稿できるWebサービスを開発。相当数のユーザーがついたことで「みんなに使ってもらえるものをつくるのが楽しい」と感じた経験が、起業を志したきっかけになった。
大学院などで画像認識や機械学習を研究し、AIブームを目にして創業。「自分のプロダクトで世界に打って出たい」との思いで、製造業の業務改善を支援する領域をターゲットに定めた。
カイゼンをAIで自動化
日本の製造業は、効率化に対するノウハウが世界一。生産性向上に意欲的な企業も多いとみる。「ずっとカイゼンを続けてきた製造現場から意見をもらうことで、プロダクトの磨き込みが高速でできる」。AIで生産ラインの動画を自動解析することで問題点を可視化し、4人が必要な作業を3人で可能にするといった成果を上げている。
カイゼンの領域は競合も多いが、「間違いなく自分たちが一番いいものをつくっている」と自負する。背景には、常に現場に足を運び、課題を聞き取っていることがある。工場は月に3、4カ所見学し、海外の製造現場にも頻繁に足を運ぶ。その学びを常にプロダクトに反映している。
顧客に必要とされ頼りにされる存在に
開発にあたっては、単に効率化するのではなく、現場の作業者の仕事を楽にし、快適に作業できるようにすることをコンセプトに掲げる。世界中の製造業の現場で、当たり前に使われるプロダクトを生み出すのが目標だ。そのために「できるだけシンプルに、一点集中で、とがったものをつくる」ことを大切にしている。
誰も見たことがない技術をつくり、それを初めて使った人の反応を見る瞬間が仕事の醍醐味だ。顧客に必要とされ頼りにされる存在になり「困ったら当社のプロダクトを使うという状況を世界中に広げていきたい」と前を向く。
プロフィール
川合健斗
1992年、三重県出身。筑波大学大学院システム情報工学研究群コンピュータサイエンス専攻を修了。大学院在籍時からオーマにインターンとして入り、修了後同社に入社。同時に東京大学松尾研究室に研究員として所属し、企業と共同でのAI関連研究プロジェクトのリーダーを複数回経験。2019年にOlloを創業。
会社紹介
製造現場向けに業務効率化ソフトウェアを開発。主力製品の「Ollo Factory」は、製品組み立てのラインを撮影し、動画をAIで解析することで、どこに無駄があるのか、作業のボトルネックになっている点を瞬時に可視化できる。日系自動車メーカーの東南アジア生産工場などを中心に約30カ所で導入されている。