これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「カケハシ・中尾 豊代表取締役社長」を取材しました。
薬を渡して終わりではない
薬局のサービスをより良いものにするためには、患者とのコミュニケーションの活性化が重要だと考える。一方で薬剤師は処方箋といった限られた情報から患者の症状を推測しなければならず、ヒアリングばかりに時間がかかって、必要な薬剤情報を十分に提供しきれていないとみる。
「困っている人を助けることほど、価値が高いものはない」。そのためには薬剤師が患者により深く関わる仕組みが必要だと考え、単に処方薬を渡して終わりではなく、継続的なフォローアップができるように支援している。
医療をしなやかに
医院を経営していた祖父の働き方が、診療以外の業務でも多忙を極めていたのを間近に見て「人の頑張りに依存するような医療のあり方を変えたい」との思いを抱いた。
デジタル技術を用いて個々の医療現場を効率化するとともに、エコシステムを築くことを重要視している。薬局や医療機関、卸業者、製薬会社といったさまざま機関が連携して情報を共有すれば、高い品質の医療サービスを柔軟に提供できるようになる。目指しているのは医療従事者が持続可能に働ける「しなやかな医療」だ。
疲弊した人に寄り添う
人生のミッションは「人の普遍的な課題を解決する仕組みをつくること」。痛みや不安などで「疲弊している人に寄り添えるサービスは、はやり廃りに関係なく必要とされる。将来、子どもや孫たちにも影響を与える社会の土台になるものだ」
薬局という場所が将来どうなっているかは分からない。ただ、患者が何らかのかたちで薬を受け取り、使う行為はなくならないだろう。
薬を提供する側と受け取る側の関係を、テクノロジーを活用しながらアップデートする「未来の医療への架け橋」であり続けたい。
プロフィール
中尾 豊
新卒で武田薬品工業に入社。その後、2016年にカケハシを創業。22年に東京薬科大学薬学部客員准教授、23年に新潟薬科大学客員准教授に就任。
会社紹介
クラウド型の電子薬歴ツール「Musubi」や、処方内容を基に薬剤別に服用状況を確認する質問を自動配信したり、問題の可能性がある場合は薬剤師にアラートを出したりする「Pocket Musubi」などを提供する。