これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「UPSIDER・宮城 徹代表取締役」を取材しました。
金融で人を支援したい
新卒で入社したコンサルティング企業で、金融機関の業務改革に携わった。アベノミクスを受けたマイナス金利施策が始まったころ、大銀行が融資先に人員や店舗削減を迫る様子を目の当たりにした。コスト削減は経営判断として正しい一面がある一方、脳裏に浮かんだのは、高校生の頃に父親が勤務する会社が傾き、経済的な苦しさから自身の進学先など選択肢が限定される経験をしたことだった。
「何かを削るよりも、新しいものを生み出す人たちや、弱い立場の人たちを支援したい」。会社で学んだ金融の知識をベースに、BtoB決済の領域で起業した。
データで未来に与信を
提供する法人向けクレジットカードは、実績が少ないスタートアップや中堅・中小企業に対して既存の金融機関よりも大きい与信枠を設定している。銀行などでは通常、過去3年分の財務諸表を基に法人の与信審査を行う。対して自社は企業の「現在」を、データを通して見る。
顧客企業の銀行口座情報を自社のシステムにAPI連携し、AIを活用した独自の与信モデルによって、預金の入出金、取引先とのやり取りなどをリアルタイムに見ることで、顧客の成長と未来をシミュレーションする。テクノロジーで企業の信用度を証明し「どこよりも大きな与信枠をどこよりも早く提供できる」
一緒に船に乗り責任を持つ
6月末時点で5万社の顧客を抱える。「今、当社が止まったら、水道が止まるくらい大変なこと」。一緒の船に乗り、事業責任の一端を担っているという意味で、責任の重さとやりがいを感じている。中小企業、スタートアップにとって資金面でのインフラとしての役割を自認し、「僕らを欲している会社は100万社以上ある」とさらなる利用拡大を見据える。挑戦者を支える資金基盤として、業務プロセスをAIで効率化する機能など、事業領域も広げている。
社会的にインパクトのある事業を成し遂げる条件は「走り続けること、途中で飽きないこと」。今は、顧客からの要望が山積みで、優先順位を付けるのが難しいほど。その状況を「飽きる暇がない、恵まれている」と感じ、走り続ける。
プロフィール
宮城 徹
1990年、東京都出身。東京大学卒業。2014年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに新卒入社。東京支社、ロンドン支社で銀行オープンAPIなどのデジタル戦略策定や大手金融機関の全社変革プロジェクトに携わる。18年に退社、UPSIDERを共同創業。
会社紹介
法人向けクレジットカード「UPSIDER」を提供。最大10億円の与信枠を付与しており、スタートアップや中堅・中小企業を中心に、利用継続率99%以上、新規上場企業の20%以上が導入などの実績がある。追加資金を借りずに支払期限を延長できる「支払い.com」や、AIが稟議、契約、支払管理をサポートする「UPSIDER Coworker」も展開している。