これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Rehabilitation3.0・増田浩和代表取締役」を取材しました。
痛感した限界
末期がんだった義母を在宅介護、在宅医療で支えたが「肉体的にも精神的にもギリギリだった」と振り返る。自身は作業療法士、妻は看護師。夫婦そろって一般の人より知識と経験を持つが、それでも「訪問介護、訪問看護と、外部サービスをフル活用しても厳しかった」
高齢化が進む現代。痛感したのは「認知症を患うなど要介護の度合いが高い高齢者は、できる限り設備や体制の整った施設で支援するのが理想」との思いだ。理想を具現化するために、介護者の負荷軽減は必須。AIの駆使がその手段になりうるとひらめいた。
介護職員の労働環境改善へ
介護施設では各種センサーからデータを取得しやすく、規則正しい生活を送る支援体制が整っているなど、AIが活用しやすい環境にあることに着目。初期設定をするだけで、向こう1年余りの高齢者の転倒リスクを予測できる「Reha3.0」を開発した。
足腰の弱った高齢者の転倒は避けられないが、「近々転倒する恐れのある人は誰か」を精度よく予測すれば、あちこちで転倒警報が鳴っている状態から、転倒ハイリスク者をピンポイントで可視化できる。介護を効率よく改善できれば、「介護職員の労働環境改善にもつなげられる」と期待を寄せる。
虐待発見や健康経営などに応用
Reha3.0は、ベッドに取り付けたセンサーから睡眠時のデータを取得するとともに、歩行や排泄などの運動13項目や記憶力、判断力など認知5項目を入力することで、AIが運動や認知の評価を行う。理学療法士が毎日評価するのと遜色のない予測結果が持続する仕組みにした。
介護以外にも、保育園で昼寝をした園児の睡眠データから虐待を発見する、あるいは会社員の睡眠データから職場のストレス具合を浮き彫りにして健康経営に役立てる、保険会社と共同で健康予測に基づく保険商品の開発するといった、さまざまな応用が可能だとみる。介護施設発のAIエンジンを駆使した「多角的なビジネス展開も視野に入れる」と意気込む。
プロフィール
増田浩和
1982年、鹿児島県生まれ。2004年、関西医療技術専門学校(現:関西福祉科学大学)卒業。阪堺病院に就職し、訪問リハビリテーション業務などに従事。12年、リハビリプラス設立。19年、Rehabilitation3.0を設立。作業療法士。
会社紹介
介護施設向けに転倒ハイリスク者を可視化するアプリ「Reha3.0(リハサン)」などを開発。独自のAIエンジンで利用者の向こう1年余りの運動能力や認知能力を推定できるようにした。