これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「avatarin・深堀 昂代表取締役CEO」を取材しました。
社会課題の解決を目指して
飛行機が好きで、安全運航に携わりたいと航空会社に就職した。業務の傍ら、新たなビジネスモデルの創出にも取り組み、米国で現地のNPOが主催するビジネスコンテストで、アバターロボットを活用した事業のコンセプトでグランプリを受賞した。
社外のリーダーにたくさん出会い、異業種の経営者らがどうやったら社会課題を解決できるかを熱心に議論する姿に「ビジネスの成功だけを目的としていない姿がかっこよかった」と大きな影響を受けた。リアル空間のデータを使って世界を変えるような事業を実現したい。「起業はそのための手段」と考え、社内スタートアップを立ち上げた。
多くの人の生活を変える
提供している接客用アバターロボットは、人のように自由に動き、顔を見ながら顧客に話しかける。現状は、スタッフが不足している現場で遠隔地からの接客に利用されている。必要な人員をあらゆる場所へ移動なしで派遣できることから「瞬間移動できるコピーロボット」をコンセプトとして掲げている。
この接客を、人による遠隔操作ではなく、生成AIで実現しようと、アバターロボットが接客する際のデータを収集。さまざまな業界に特化したマルチモーダルの生成AIの開発を進めている。実現すれば「人口減少に伴う人手不足という大きな課題を解決し、より多くの人の生活を変えるサービスになる」と力を込める。
教師データはプロの接客
生成AIが脚光を浴びているが「現状の生成AIは、気が利かない」と感じる。目指すのは、人間と応対しているかのようなやり取りができるAIの開発だ。どういう状況でどう動くか、プロフェッショナルの人間の技術をAIに学ばせる。眼球の動きや無意識の行動をデータとしてデジタル化。人間ならではの相手を気遣った優しい対応を教師データとして学んだ生成AIなら「人とAIが温かなやり取りができる世界が実現できる」
4歳と1歳の娘の父。子どもができてから、目指す世界の解像度が上がった。娘たちが生きる未来に、どんな社会を残せるか。思いをかたちにする挑戦は続く。
プロフィール
深堀 昂
1986年、群馬県出身。東海大学工学部航空宇宙学科卒業。2008年、新卒で全日本空輸(ANA)に入社。技術系総合職としてパイロットの緊急時の操作手順などを設計する運航技術業務や、パイロットの訓練プログラム立ち上げを担当。14年からはマーケティング部門で新規プロモーションを企画。20年、ANAの社内スタートアップとしてavatarinを創業。
会社紹介
遠隔地から顧客をサポートする接客AIソリューション「avatarin」を提供。コミュニケーションAIロボット「newme」のデバイス生産から、販売、サービス提供まで一気通貫で行っている。newmeが遠隔操作でサービスを提供する過程でのスキルの高いサービス提供者のやり取りを教師データとして、業界特化型のAIを開発している。