これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「ザブーン・戸高克也代表取締役/CEO」を取材しました。
早朝の砂浜に事業計画を描く
大分県の実家が船舶管理の会社を経営していたこともあり、幼少期から海に親しんで育った。「実家近くの海で泳いだり、潜ったり、飛び込んだりと、遊び場と言えば海だった」と振り返る。
神奈川県の大学に進学してからは、湘南の海に魅せられサーフィンにのめり込む。海岸の近くに居を構え、会社の事業計画は「早朝、まだ誰もいない砂浜に絵図を描きながら考えた」。棒切れで描いた絵をスマートフォンで撮って持ち帰る姿は「ほかの人から見たら、さぞ奇異に映ったことだろう」と話す。
船員の働き方改革が転機に
起業当初は海運業界向けの人材紹介業からスタートし、船舶管理プラットフォーム「MARITIME 7」の開発に着手。保守部品の在庫管理や受発注、船員の労務管理、運航管理のレポートなどを同一プラットフォームで運用できるのが特徴だ。
転機が訪れたのは2022年4月。船員の働き方改革の一環で改正された船員法で、船員の勤務時間を正しく記録に残して管理することが求められるようになった。「ここにデジタル化のニーズがある」と感じ取るや否や、労務管理の開発を大幅に前倒しし、3カ月でサービス開始にこぎ着けた。
海外展開の準備も着々
狙いは的中して問い合わせが殺到。労務管理のサービス開始から2年ほどで利用社数100社余り、利用隻数500隻、船員利用者数6500人を突破する製品となった。全国の船舶管理会社は3000社程度あるとみており「伸びしろは依然として大きい」と手応えを感じている。
新卒で入社した人材サービス会社を脱サラして一度起業するも失敗。その後、10年にわたって家業の船舶管理会社や、100隻規模の管理を行う大手同業他社に出向するなどして修行を積んだ。「実務を知っているからこそデジタル化のニーズをつかめる」と考えたからだ。
今は内航船中心に全国の港を飛び回りMARITIME 7の導入支援を行っているが、「海外と行き来する外航船の市場にも進出したい」と、海外展開の準備も着々と進めている。
プロフィール
戸高克也
1986年、大分県生まれ。2009年、関東学院大学経済学部卒業。同年、ディップに入社。その後、家業の船舶管理会社に勤務。18年、ザブーンを設立。
会社紹介
船舶管理プラットフォーム「MARITIME 7(マリタイムセブン)」を開発。船員の労務管理や運航管理、部品や備品の受発注管理などを実装している