これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「シンプルフォーム・田代翔太代表取締役CEO」を取材しました。
全ての法人をフェアにつなぐ
銀行で、口座開設やビジネスマッチングなどに訪れる法人の審査業務に携わっていた。その会社が金融機関にとって取引先として適切かを判断するには、人手を介したアナログな確認作業が必要だった。
複数のデータベースをまたぎ、事業実態や信用情報などを時間をかけて審査するが、企業規模が小さいほど公開情報は少なく、調べるのに時間を要する。情報がないことを理由に、健全性が確認できず取引をやめてしまうケースも目にした。「銀行側の業務を効率化すれば、全ての法人に適切な取引の機会を提供できるようになる」。法人がフェアにつながれる世界の実現を目指し、公平な審査プラットフォームの提供を事業化した。
データを整理しぬく
提供するソリューションは、行政機関やインターネット上に点在する全国500万社の定性情報を集約。通常は収集や整理に数日かかるこれらの情報を30秒でレポーティングし、法人確認プロセスを自動化した。銀行員時代の「自分がほしかった」製品だ。
情報の精査には、社員による独自の調査とテクノロジーを組み合わせている。集めた大量のデータを徹底的に整理しぬくことで、「リアルタイムでその会社の情報を可視化できる」ようにしているのが強みだ。大手金融機関で導入が進んでおり、人による審査のばらつきをデータによって平準化できる点も評価されている。
数十年先の当たり前に
金融機関の法人審査は、現状専門知識を持つ行員が担っており、提供するソリューションも専門家の利用を想定している。ただ、金融領域では仮想通貨の拡大などデジタル化の波が押し寄せており、今後はよりスピーディーな審査が求められていくとみる。「誰でも高いレベルで審査ができる」サービスを目指し、AIの活用も視野に入れる。
自社の事業を、データという土を耕し、プロダクトという稲を育て、金融業界の事業を円滑に回していくというサイクルに例える。「数十年先に、電気のように、誰も気にしないけれど当たり前にあるものになっていたい」。そのために日々地道にデータと向き合っていく。
プロフィール
田代翔太
1988年生まれ、群馬県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。2011年、日本政策投資銀行に入行。ファンドの管理や関連会社での国内外への投資業務、銀行内での新規事業開発に従事。20年、シンプルフォームを創業。
会社紹介
法人確認プロセスの自動化を実現する「SimpleCheck」や、情報や属性の変化が対象法人に生じた際にリスク情報を自動通知する「SimpleMonitor」を開発、提供。大手金融機関やプラットフォーマーなどを対象に、金融・商取引における審査の効率化や高度化を支援している。